日本の自動車メーカーにとって“ドル箱市場”とも呼ぶべき米国に変化の兆しだ。自動車販売台数はピークアウトしたとの観測が浮上。需要の中身もセダンからSUV(多目的スポーツ車)を含むトラック系へとシフトしているという。トランプ大統領の動向も気になるところだ。

セダンからSUVへと需要がシフトしている米国。本田技研工業の「CR-V」は1997年のデビュー以来、米国のSUVセグメントで20年近くもベストセラーの地位を守り続けている(画像は本田技研工業より)

米国で売るクルマは米国で作れ

トランプ大統領は、その就任の第一声から「アメリカ・ファースト」を連呼し、選挙中と変わらぬ保護主義とポピュリズム一辺倒は「やはり」といった感じだった。

さらに「日米自動車貿易は不公平だ」と主張し、日本の自動車業界を困惑させている。「1980年代ならいざ知らず、日本からの対米自動車輸出よりも現地生産の拡大、現地化が定着している。日本市場も激戦の中で、米国の自動車メーカーは売る気がないから売れないだけだ。昨年でフォードは日本事業から撤退しているし、東京モーターショーにも数年前から米車は出展すらしなくなっているんだからね」とは、ある日本車メーカー首脳の声である。

それにしても、トランプ大統領は国内での雇用創出を念頭に、「米国で売るクルマは海外でなく米国で作るように」と、米国メーカーも含めた自動車業界に求めていることは確かである。

インセンティブ競争で各メーカーは負担増

日本車にとって米国市場は、文字通り“ドル箱市場”なのである。今や、世界の自動車市場は中国がトップとなったが、それでも米国は「自動車大国」であり、日本車にとっては現地生産・供給体制が確立しており、販売量・台当たり収益ともに大きい戦略市場である。

2016年の米国新車販売台数は、1755万351台となり2年連続で過去最高を更新した。これで7年連続の台数増であり、この数字だけを見ると米国自動車市場は好調である。

しかし、2016年夏頃から、それまで右肩上がりだった米国の新車需要に陰りが見え出した。セダンクラスの小型車の売れ行きが落ちてきたのだ。このセグメントでは、インセンティブ(販売奨励金)を積むメーカー間の値下げ競争が激しくなった。必然的に、自動車メーカーとしては収益力が低下する。

結果的に、年間の新車市場は1,755万台と高水準となったが、前年比では0.4%と最近では最も低い伸び率となった。ガソリン安で小型車需要が落ちてきたことで、米国自動車市場全体がピークアウト、減速感が強まっているとの見方が示されてきたのである。