TVアプリはiPad、iPhoneでも利用可能だ。同じApple IDでログインしており、それぞれのデバイスにストリーミングアプリが入っていれば、リビングで見ていた番組をモバイルに引き継いで見ていくこともできる。また、、出先で映画などのカタログをモバイルデバイスから見つけてUp Nextに追加しておき、家に帰ってTVアプリから視聴を開始する、といった使い方も考えられる。

が、現状このことの意味は薄いと感じられる。その理由は、筆者を含む多くの人々が、単一のストリーミングサービスを中心に視聴しているからだ。例えばNetflixだけを契約している人は、同じことがNetflixアプリ内で起きるため、TVアプリの意義を見出しにくい。

しかし、ケーブルテレビで視聴していたテレビ局がインターネットのストリーミングへ入ってきたり、複数のサービスでコンテンツを視聴するようになると、TVアプリのWatch Nowのページは重要性を増してくることになるだろう。

NetflixやHuluなどのコンテンツ配信サービスを2つ以上契約する可能性は薄いが、テレビ局のアプリは複数入れてみることになるだろうし、生放送の番組をUp Nextに追加して視聴するというスタイルも、今後登場してくることになるはずだ。

テレビ上での映像視聴のハブのような役割がTVアプリには込められている。ただ、その価値が顕在化するまでには、もう少し時間がかかりそうだ。

松村太郎(まつむらたろう)
1980年生まれ・米国カリフォルニア州バークレー在住のジャーナリスト・著者。慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程修了。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。近著に「LinkedInスタートブック」(日経BP刊)、「スマートフォン新時代」(NTT出版刊)、「ソーシャルラーニング入門」(日経BP刊)など。ウェブサイトはこちら / Twitter @taromatsumura