11月3日、ニコニコ動画関連では最大級となるライブイベント「ニコニコ超パーティー2016」が開催された。「ニコニコ超パーティーは当初」、幕張メッセで開催されている「ニコニコ超会議」内で行われていたが、昨年からは単独開催となり、場所もさいたまスーパーアリーナに移している。来場者は約15,000人、ニコニコ生放送でもチケットを購入すれば視聴可能だ。この「ニコニコ超パーティー」を現地で体験した。

「ニコニコ超パーティー」は、かつてニコニコ動画が開催していた記者・ユーザー向けの発表会「ニコニコ大会議」で行われていたライブイベントが前身となっている。そこから「ニコニコ超会議」へ場を移し、さらに昨年からは「超会議」からも独立してさいたまスーパーアリーナで単独開催となった。イベント開始は13時。終了は20時。実に7時間に及ぶ長時間のステージだ。

「ニコニコ超パーティー」では、ニコニコ動画に投稿している一般の人気ユーザーが主役だが、ゲストとして毎年、著名人が"降臨"するのが習わし。今年の目玉は「ポケットモンスター」シリーズで知られる声優・歌手の松本梨香と、サプライズ出演した元SKE48の宮澤佐江。その他にも毎年出演している小林幸子、松岡充といった面々が顔をそろえた。

オープニングを飾ったのは松本梨香。「ニコニコ超パーティー」では毎年、その回の目玉となる有名人が最初に登場するのが(明言しているわけではないが)恒例となっている。7時間ものステージを盛り上げ続けるためには、何よりも最初の出演者のパフォーマンスが重要。"絶対に外さない"という意味で松本梨香をもってくるのは大正解だった。

松本梨香が披露したのは、やはり定番中の定番である「めざせポケモンマスター」で、会場は大盛り上がり。登場前に『ポケットモンスター』のアニメを使ったMAD動画を流したのも「ニコニコ超パーティー」では定番の演出で、盛り上げに一役買っていた。

松本梨香が盛り上げたステージを引き継ぐのは、ニコニコ動画のユーザー出演者たち。歌あり、ダンスあり、楽器演奏ありと、ニコニコらしい何でもありのパフォーマンスが続いていく。

7時間ものイベントになると見ている方も疲れるし、どうしても中だるみしそうなものだが、「ニコニコ超パーティー」に関してはそれがほとんどない。筆者は最近、ニコニコ動画から少し離れ気味で、最新の流行にはついていけていないのだが、それでも飽きずに楽しめるのには感心した。

これは、「超パーティー」の構成・演出が巧みなおかげだと思う。単なるライブイベントで知らない歌手の知らない歌が続くと集中が途切れてしまうが、「ニコニコ超パーティー」はLEDモニターを活用したステージ演出がバラエティーに富んでおり、「次はどんな演出で驚かせてくれるのか」という期待感で飽きずに見続けることができるのだ。

これはニコニコ動画の再生ボタンを押すときのワクワク感に似ている。たとえ知っている楽曲でも、「この人はどんなふうに見せてくれるんだろう」という期待感だ。その点でニコニコ動画はすでにそれ自体がライブ的ともいえるし、「ニコニコ超パーティー」はニコニコ動画の文化をしっかり体現できていると感じる。

そう考えると、ニコニコ文化と好相性なのが小林幸子のステージだ。観客を驚かせるネタはいくらでも持っている上に、どれも桁外れのインパクトなのだから強い。最初に小林幸子がニコニコのライブイベントに出演したときは驚いたが、いまやすっかり「超パーティー」の顔になっているのもうなずけるというものである。

小林幸子

今年の小林幸子の衣装は、紅白歌合戦でも使用した巨大な獅子。映画『ポケットモンスター』主題歌「風といっしょに」のほか、全3曲を熱唱した。そのうち一曲は今年の人気ボーカロイド曲『エイリアンエイリアン』で、これを小林幸子は『サチコサンサチコサン』にアレンジして披露。これで盛り上がらないわけはない。

小林幸子が登場したのはちょうどイベント全体の中盤で、そろそろ観客が疲れてくる頃合い。絶対に盛り上げるプロ中のプロをここに配置したのは大正解だ。

過去、すべての回に参加している筆者からすると、正直そろそろ「超パーティー」のコンテンツそのものはマンネリ気味である。ユーザー出演者の顔ぶれもそう大きくは変わらないし、楽曲も人気どころは何年も使われ続けている。

それでも何だかんだで「超パーティー」が楽しいのは、前述したように演出の力が大きいのだと思う。

その一端を担っていたのが、Robycam(ロビーカム)だ。2階席で鑑賞していたとき、会場の上方を動き回るカメラがあることに気づいた。最初はドローンかと思ったのだが、そうではなく、ワイヤーを利用して動き回るカメラだった。

実はこのカメラにはAR技術が搭載されており、これまではメインカメラでしか出せなかったARをどの角度の映像でも載せられるようになったのだ。これにより、ニコニコ生放送で鑑賞している際にARがカメラの切り替えで出たり消えたりすることがなくなった。細かいことではあるが、イベントを生放送する上で今後当たり前になっていきそうな技術である。ちなみに、このカメラをライブイベントで使用するのは今回の「超パーティー」が初めてだという。

どの角度からでもARを楽しめる

さらに、ボーカロイドライブやシオカラーズのライブで使用されている透過ボードもリニューアル。透過率が増して、キャラクターの立体感が増した……という触れ込みだったのだが、これは席が遠かったこともあり、会場では効果のほどがよくわからなかった。むしろ、ペンライトの映り込みが激しく、ボードの存在がはっきり見えてしまっていたのは少し残念なところ。

定番のボカロライブ

この透過ボードを活用した演出は超パーティーの目玉の一つでもあるので、来年以降に期待したい。

とはいえ、ボーカロイドライブ自体は今年もすばらしいものだった。『ハジメテノオト』から始まり、ボーカロイドの歴史を追いかけていくような映像演出にはグッときたし、LEDモニターを突き破って透過ボードに出現するという演出は最高にシビれた。昨年のボカロステージもすばらしいものだったので、ハードルをかなり上げていた人は多かったと思うが、十分に満足させてくれるステージだったと思う。

アンコールには、歌う楽曲をニコニコ生放送のアンケートで選ぶというユニークが試みがあった。AR演出もそうだが、「超パーティー」はニコニコ生放送視聴者だけの特典をいくつも用意しており、ネットユーザー参加型のイベントであることを強く意識して作り上げている印象だ。

最後に、「超パーティー」といえばゲーム実況エリアにも触れておかなければならない。ゲーム実況エリアは、ライブエリアとはまったく別のホールに設置され、お客さんは一枚のチケットで両方のエリアを自由に行き来できる。

今年も大勢がゲーム実況エリアに詰めかけた

ゲーム実況については昨年から特に変わった点もなく、強いて言えば人狼など、アナログな駆け引きを楽しむゲームが増えた印象だ。

大舞台でのゲーム実況の場合、かなりの人数が同じステージに立つことが多く、デジタルのゲームではともすればトークが散漫になりがちで、それぞれの持ち味をうまく生かすのが難しいこともある。

その点、人狼は「全員で一気に参加できて」「全員が敵同士である」という点で優れた実況コンテンツであると感じた。

変わらないように見えて、演出面やコンテンツ面が少しずつアップデートされている「ニコニコ超パーティー」。

何しろさいたまスーパーアリーナに場所を移してまだ2回目である。来年以降もがらりと変わることはないかもしれないが、きっと今年の経験を踏まえて着実なアップデートを加えてくれると期待している。