Googleは1日、VR(バーチャルリアリティ)機器のプレゼンテーションならびにVR「お絵描きソフト」である「Tilt Brush」の体験会を六本木ヒルズ グーグルオフィス YouTube Space Tokyoにて開催した。


「Tilt Brush」は、PC向けのVRヘッドマウントディスプレイを装着することで空間に3Dのアートを描けるGoogle製のVR製品で、簡単に言えばお絵かきツールの「ペイント」で自分のまわりの空間をすべて「用紙」として描くことができる、まったく新しい体験のできるアプリケーションだ。

今回はVRヘッドマウントディスプレイを装着している人の見ている世界をスクリーンに同時に表示することで、ヘッドセットの中で何が起きているのかより感じることができるとともに、実際に体験することができたので、その様子をレポートしたい。

GoogleのVRは「紙」から「布」へ

プレゼンテーションを行ったGoogle VRパートナーシップ グローバルリードのアーロン・ルーバー(Aaron Luber)氏によると、GoogleのVRに対する取り組みについては、「GoogleはVRを通じて「情報」を「体験」として伝えていきたいと考えています。そういった理念はGoogleを設立した当初から変わっておらず、VRが「体験を可能にする」と捉えていて、なぜ私たちがそれに取り組んでいるかいうとVRがエンターテイメントや、教育という観点だけではなく「未来のテクノロジー」だからです」とその狙いを話す。

アーロン・ルーバー(Aaron Luber)氏とスクリーンに映るプロトタイプの「Cardboard」

このたびVRヘッドセット機器「Daydream View」が発売となったが、GoogleのVRというと、「Cardboard」がいわば初号機となる。「Cardboard」はその名の通り段ボールで作られており、手持ちのスマートフォンと組み合わせて利用する簡易的なヘッドマウントディスプレイ。Youtubeの360°動画などで手軽にVR体験ができ、のちにオープンソース化したことで多くの企業がオリジナルのものを作って販売するようになった。

「『Cardboard』を使おうと思ったのは手軽で頑丈だということ、もちろん安価だという理由です。箱にスマートフォンを挟んでセットして覗くだけというシンプルな使い方なのに、とてもパワフルで多くの方々にVRを体験してもらえる。オープンソース化したことでプラスチックやビニールなど様々なタイプが発売されていて、今やCardboardは500万人の手元にあります。ユーザーは一度使うと必ずと言っていいほどその体験をシェアするので、リーチはその4~5倍あると見ていますが、こういった体験を多くの人にしてもらえることが嬉しいし、そういったなかで『Daydream View』はCardboardを次のステップに引き上げた製品となりました」(ルーバー氏)

スマートフォンを設置したところ。布製で温かみのある作り

使用後、コントローラは無くさないよう「Daydream View」の中に入れて収納できる

装着するとこんな感じ。全く伝わらないが筆者は360度超リアルなアマゾンの中にいるところ

また、Cardboardの上位機といえるHMD「Daydream View」については、「これまでとは全く異なる素材を使用し、使い勝手が良いのはもちろん、ストラップを付けたことで手が空くようになりました。そこで空いた手で使えるシンプルで直感的なコントローラが開発されたのです。これまでのCardboardはインプットが一つしかできませんでしたが、これによってスイングができたり、釣り竿のように投げたり、押したり、スワイプも可能です」(ルーバー氏)

AR×Googleマップの可能性

この「Daydream View」だが、対応しているHTCのスマートフォン端末「Pixel」が日本ではまだ未発売であり、発売が待たれる状態にある。端末にはカメラがもうひとつ追加されており、深度を感知するセンサーが搭載されているほか、モーショントラッカーで現状の場所を正確感知できることができるようになっているとのことだ。

AR機能「Tango」についても言及し、今後は複数のカメラとセンサーの組み合わせを可能にする端末で、視覚で捉えたものをそのまま携帯端末で再現することができるようになるとしている。例えば、Googleマップを使う際、現状は店舗までのルート案内を行っているが、AR機能によって店の中、特定の棚まで案内するようなユースケースを想定している。

また、物の位置情報のマッピングが可能となり、空間把握が3Dでできたり正確に物の測定ができるようになることで、例えばお店で見た椅子を実寸で自分の部屋に置いてみたり、部屋のレイアウトをVR上でつくってみたり、動物などのアニメーションと一緒に遊ぶことができることを挙げた。

AR分野に関しては、すでにさまざまな業界で「体験」をテーマにしたプロモーションも増えてきている。例えばVOLVOでは車に乗った時の運転席の体験をVRで行ったり、映画業界でもプロモーションに使われることが増えた。旅行や不動産などの業界ではVRなしでは見られないものを体験したり、ファッション業界ならVR試着ができたりと世界が手軽に、そしてリアルに広がっていくことになるだろう。