日立製作所(日立)は11月25日、メッセンジャーRNA(mRNA)を細胞単位で高効率・高精度に解析できる1mm角の小型チップを開発したと発表した。同チップでは、最大100個の細胞に対して同時に、1細胞中に15分子しか存在しない微量な種類のmRNAでも高精度に抽出・解析することが可能。同成果は、11月23日付けの英国科学誌「Scientific Reports」に掲載された。

同社は今年3月、1細胞ごとにmRNAを抽出する微小反応槽を100個集積した1mm角のチップ(Vertical Flow Array Chips)を開発。このチップを平面内に複数配置した解析デバイスでは、反応槽の上方から試薬を一括供給することで、自動的に多数の細胞中のmRNAを抽出できるほか、必要試薬量を従来の1/20程度に抑えることで解析コストの低減を実現していた。しかし、反応槽が小さく微粒子の充填が困難であったため、mRNAの抽出効率が低く、詳細かつ正確な解析に十分な精度が得られないという課題があった。

今回、mRNAを抽出するための微粒子を微小反応槽に多数充填し、その表面積を大幅に増やすことで、抽出数を従来の約10倍に向上。同チップを複数配置した小型解析デバイスの試作機を用いた遺伝子解析実験の結果、約2000個の細胞の遺伝子を同時に解析できる高い並列性能と、1細胞中に存在する15分子という極微量のmRNAを抽出できる高精度な解析を両立できることを実証した。

同社は、1万個の細胞に対して同時に遺伝子の解析が可能なデバイスも試作しており、生体組織としての特徴を正確に把握するために有効とされる数千の細胞の同時解析が可能となる。今後は、がん組織中の細胞やがん発生初期の細胞などの病気のモデル細胞の解析に適用することで、病気のメカニズム解明や治療法の開発などでの技術の有用性を検証していくとしている。

今回開発されたデバイスとチップの構成