1つはソーラーパネルの原材料であるポリシリコンの購入について以前に結んだ契約の中に転売が禁止されているものがあるため、将来使用する見込みがなくなった場合に回収が困難になるというもの。当時の契約残高は約283億円だ。もう1つは堺工場で太陽電池を生産するために必要な電気などの供給についての複数サプライヤーとの長期契約でも、当時の未経過残高が合計で約396億円(残年数は1.75年~13.25年で、いずれも中途解約は不可能)となっていた。

戴社長は「今までの契約を尊重しますが、見直しの余地を見つけて交渉して改善していきたい。購買契約や、ポリシリコン、事業所の建築物の契約などもそうです」と語った。

「ワンシャープ」と「Be Original.」で信頼回復を目指す

決算発表会の中では、すべての事業部や社員が一致団結して成長軌道への転換を目指す「ワンシャープ」と、創業精神である「誠意と創意」を追求する「Be Original.」が掲げられた。

今後再建するために「今の事業を全部しっかりやっていきたい」と語りつつも、カギとなるのは「IoT(もののインターネット)」だと戴社長は強調した。

「IoTは、今シャープが持っている白物テレビやソーラーパネル、ディスプレイ、センサーなどのデバイスやソフトウエアなど全部をつなげることができます。だからIoTがワンシャープを一番達成できる技術だと思います」

IoTでさまざまな機器やサービスがつながれば、スマートハウスやスマートオフィス、スマートファクトリー、さらにはスマートコミュニティー、スマートシティーへと広がっていく。

「ここも鴻海と協業できるところですので、シャープにとって一番強いところかもしれません。日本のP社(パナソニック)もスマートコミュニティーを手がけていますが、なぜかシャープはできません。まずは近いところの(足下の)商品、事業をがんばってほしいと思っています」(戴社長)

経営破たんによって生じたシャープのイメージや信頼の低下は計り知れない。粉飾決算によって白物家電事業を中国のマイディアグループ(美的集団)売却した東芝の白物家電なども同様だ。ある家電量販店の副店長は「シャープや東芝が外資傘下に入ったことで、お客様にも敬遠される動きがあります」と語る。筆者としては実態とはかけ離れたイメージだと考えるが、一般消費者が持つ印象としては理解できる部分もある。

かつて、1990年代から「目の付けどころが、シャープでしょ。」というキーワードを掲げていたシャープ。プラズマクラスターブランドのほか、いち早く「健康調理」をうたったヘルシオブランドなど、家電製品の分野では着実にプレゼンスを上げてブランド力を向上してきた。コミュニケーションロボットの「RoBoHoN」や、東南アジアで開発を進めた「蚊取空清」など、シャープならではの“とがった”製品作りは最近でも進められている。

戴社長は出身である鴻海の役員を辞任する考えを示しており、不退転の決意でシャープの再生に臨む。「創業者の誠意と創意。真似される商品を作りましょう。そして昔の栄光を回復するような、シャープにしていきたいと思っています」という戴社長の言葉に期待したい。