立命館大学は、文部科学省の「革新的イノベーション創出プログラム(COI STREAM)」における「運動の生活カルチャー化により活力ある未来をつくるアクティブ・フォー・オール拠点」事業の中核として、スマートウェアや空間シェアリング技術を用いた運動誘導/継続システムの開発に取り組むことで、寝たきりゼロ社会の実現を目指している。

11月22日に立命館大学東京キャンパスにて開催されたプレスセミナーでは、同事業でこれまでに開発された技術を活用し、スマートウェアが収集した生体情報にあわせて、最適な音楽リズムを超音波スピーカーから流すというデモンストレーションが公開された。

スマートウェアで計測した心拍数にあわせて、最適な音楽リズムが写真の男性のみに聞こえるよう超音波スピーカーから流れている

写真の男性が着用しているのは、立命館大学が東洋紡、オムロン、近畿大学らとともに開発する、フレキシブル生体センサを用いたスマートウェア。現時点では、心電図や心拍数の計測が可能だ。東洋紡が開発したフィルム状の導電性素材が、センサ用の電極・配線材として用いられている。同素材は、約0.3mmと薄く、伸縮性に優れ、熱圧着で生地に貼り付けることができるうえ、抵抗が低く濡らさずに用いることができるのが特徴だ。100回洗濯しても動作する耐久性も持ち合わせているという。

スマートウェアの裏側。東洋紡が開発したフィルム状の導電性素材を用いて心電図用電極が貼り付けられている

スマートウェアの表側。心電図アンプ回路および加速度センサが内蔵されたトランスミッタが中央に装備されている。収集されたデータは無線で送信する

また、デモンストレーションでは、立命館大学が開発した超音波スピーカーによる空間シェアリング技術を用いることで、運動にあわせた音楽リズムが男性にのみ聞こえるよう流れていた。この音楽リズムは、スマートウェアで計測された心拍数にあわせて、最適な運動プログラムとなるように設計されており、個人の能力や目標に応じた運動が可能となる。

同事業の狙いは、これらの技術を用いることで、運動の文化を生活の一部として根付かせること。たとえば快適なオフィス空間づくりへの応用や、教育やまちづくりといった面での展開も想定されている。

同事業の研究リーダーを務める立命館大学スポーツ健康科学部 伊坂忠夫教授は、「すべての人が活動的な生活を送ること、健康・幸福寿命延伸、寝たきりゼロが目標。運動をやらされるのではなくやりたくなるような社会を作っていきたい」としており、今後、これらの技術の社会実装に向けて、さまざまな企業と連携しながらさらなる研究開発を進めていく考えだ。

立命館大学スポーツ健康科学部 伊坂忠夫教授

東洋紡 総合研究所コーポレート研究所快適性工学センター部長 石丸園子氏。同事業のプロジェクトリーダーを務める