Nuance Communicatonsの日本法人であるニュアンス・コミュニケーションズ・ジャパンは11月18日、矢の経済研究所と協力して実施した日本における自動車内での音声認識機能の利用実際調査結果の2016年版を公開した。

同調査は、ほぼ2年に一回、エンドユーザーの音声認識技術に対する意識を調べることを目的に行われているもので、今回の調査の対象者は20歳~69歳の男女、カーナビが搭載された2013~2016年式車を有し、かつスマートフォンを利用しているエンドユーザー(スクリーニング調査の件数としては10010件)。

スクリーニング調査によると、スマホの音声アシスト機能を使ったことがあるのは全体の6割程度。週に1回以上利用する割合は15%ほどで、男性の割合が高く、中でも20代は1日1回以上利用するユーザーが1割程度と高い割合を示している。ただし、週に1回以上利用する年代の割合としては60代がもっとも高く、これについて同社では、老眼で文字が見えにくいため、代わりに音声で読み上げてもらう、といった使い方が為されている可能性があるとする。

スクリーニング調査から得られたスマホの音声認識機能の利用頻度と利用目的。20-30代はスマホと雑談する傾向が高いことが分かった

一方、自動車における音声認識機能、特にカーナビでの利用については、過半数以上が「音声による目的地入力」を活用しているという結果となった。この結果について同社は、「カーナビで住所を入力するためには、都道府県を選んで、市区町村を選んで、といった階層を深く掘り下げていく必要がある。これが音声であれば、そうした階層を掘り下げる必要がなくなり、そうした利点が受け入れられているためではないか」と推測する。

カーナビにおいては、音声による目的地に関連する情報入力が圧倒的に利用されている割合として高いことが分かった

ちなみに運転中に利用する音楽のソースとしては、ラジオがトップで、次いでCDやCD-R、SDカード、USBメモリなどとなっており、スマホやMP3 プレーヤをつなげて利用する割合は3割程度にとどまるほか、Apple Musicのような音楽配信サービスの利用は4%にとどまっていることも明らかになったという。この結果については、同社にとっても意外だったようで、「調査開始前には、すでに加入者がそれなりに居るが、次々のパケット量を気にして使わない、という傾向があるのではないかと推測していたが、いざ調べてみると、まだそうした話の前段階の状態であることがわかった」としている。

運転中に利用する音楽ソースとしてはまだまだラジオやCDの割合が高い。ラジオについては、音楽のみならず、渋滞情報などを確認する場合などでも活用されており、今後も利用頻度は高いままと思われるという

運転中に手を使わずに音声だけで利用したいスマホの機能としては圧倒的にSNSやメールなどのメッセージの送受信であり、中でも回答者の3割がLINEをカーナビの画面で使いたいスマホアプリに挙げたという。

運転中に手を使わないで利用したいスマホの機能としては、SNSやメールなどメッセージにに関する割合がすべての年代で高い傾向が見られた。中でも使いたいアプリとしてはLINEが3割を占めるなど、人気が高い傾向があった。次点は天気予報関連アプリで、次いでメール、ニュース、検索、地図といった順に続いているという

なお同社では、この数年でメーカーオプションのカーナビ(メーカー出荷時から装着されている純正品)の割合が高まってきており全体の6割を超える程度まできている。ニュアンスでも、そうしたカーナビにライン装着ソリューションを提供している割合が高く、こうしたメーカーオプションで音声認識対応のカーナビが増えていくことは、市場の拡大につながっていくとコメント。すでに海外、特にドイツの自動車メーカーでは、運転中のメッセージ系のやり取りを音声でできるようにするソリューションを活用しており、日本でも徐々に輸入されつつある現状を踏まえ、日本の自動車メーカーにも同様のソリューションを提案していくことで、自動車でのさらなる音声認識機能の活用を推進していきたいとしていた。