イラスト : まずりん

鍼灸師・若林理砂さんが、あなたの近くにいそうなキャラたちの健康相談に答えるこの連載。シーズン1で登場した個性豊かな患者さんたちの「再診」で、現代を生きる人が陥りがちな、体と心の関係を探っていきます。

男性、30代、空間デザイナー
やせ体質、通勤は自転車を利用(片道40分)、週に1回はジムに通っている。前回はプロテインに頼った筋トレで体重が保てず、体調を崩しがちだったため、食事を見直すようにと指摘されていたのですが…?

おや、再診ですね。どうなさいましたか?

今日の患者さん「食事の改善をしたのに調子が悪い」

「最近なんだか体が重くて……。」

そういえば少し、依然いらしたときよりもふっくらなさいましたね。ですが、顔の色つやもその頃よりずっといいですし、現状問題はないように思えますけれども……。

「そうなんですよー!なかなか体重が増えないって悩んでいたんですが、先生のおっしゃるように食べ方変えたら少しずつ増加してきて。ペットボトル温灸も続けてます。だけど、このところ全然ジムに行けてなくて。脂肪が増えてしまった感じがして」

なるほど。BMIも標準的なところに入っていて、体脂肪率もこの値なら肥満ではありませんね。というかむしろ、以前よりも健康体に近づいています。

「……そうですか……。じゃあ、このダルい感じってなんなんですかね?」

そうですねえ。ジム以外で何か運動できていますか?

「一回足が遠のいちゃうと、運動自体やらなくなっちゃうんですよね。自転車通勤は続けてますけど、それ以外は何も」

ああ、じゃあ解決方法がありますね。それも、すごく簡単で、お金もかからなくて、誰でもできる方法です。

「なんですかそれ?」

日本にいる人はだいたい知ってる、意外な万能運動法

ラジオ体操ですよ。テレビでやっている、テレビ体操でもいいですけれどね。

「えーっ!?学生時代以来やったことないですよ。そもそも、ラジオ体操とかダサくないですか。」

運動に貴賎はありませんよ。ダサいって言ったらあなた、月会費だけ払い続けているジムの幽霊会員のほうがダサいでしょうが。

ジムで体を動かすなんて、ほんの最近になってからのトレンドです。昔は肉体労働をするのが普通だったから、ああやってジムでマシーンを使って運動をすることを「お金を払ってまで体を動かすなんておかしい」と揶揄したりしたんですから。

ラジオ体操は小学校で必ず教わっているから、始めるのが簡単かつ、省スペースでもできて大変優秀な運動。それに、アレは明治時代の名だたる運動指導者が総出で作り上げた、傑作エクササイズですよ。やってみるとわかりますけれど、本当にくまなく体が動かせてとてもいいのです。

「そうなんですね…なんか、小さい頃にやらされた記憶だけがあって、古くさいなーと思ってました」

古くさいも何も、人体の構造なんて、縄文時代より昔からほとんど変わってません。そんな歴史の中で、マシーントレーニングなんてほんの一瞬前から始まったようなものです。日常の中に運動を取り入れて、息をするように行えるようになるほうが結果として、落ちにくい筋肉がついてきます。

マシーンでつけた筋肉は、マシーンをさぼると落ちちゃうんですよ。だけど、日常で培った筋力は毎日毎日鍛えられるから落ちにくい。なので、あなたの下肢の筋肉は落ちてないわけですよ、自転車通勤を続けてるから。

「あっ、言われてみれば…!腹筋とかは落ちちゃったのに、足は前とほとんど変わらないですね。ほんとだ…」

日常のだるさを取るラジオ体操のやりかた

体がだるく感じる原因というのは、くまなく体を動かせていなくて、一部の筋肉や関節が固くなって、動きが悪くなっているからでしょう。ほんの5分程度のラジオ体操第一を1回行うことでも全く違ってきます。

理想は10分間、ラジオ体操第一と第二を続けて行うことでしょうか。あなたの場合は,運動には慣れているから第一と第二を連続で行うほうがいいでしょうね。

極端な運動不足の方はテレビ体操のほうをお勧めしますけどね。あれだと、ラジオ体操を行う前に小さい運動をするので、関節などを壊しにくいんです。

養生してね、お大事に!