紅葉を見るなら京都へ出掛けたいという人は多いと思う。単に色付いた木々を楽しむのみならず、趣深い古都ならではの情景に溶け込むような紅葉の美にひたりたいからだ。今回は、観光地京都の中でも特に人気の高い嵐山・嵯峨野エリアへ、王朝時代の風流人たちも愛した、美しい紅葉を愛でに出掛けよう。

天龍寺の塔頭「宝厳院」の「獅子吼の庭」の紅葉ライトアップ

嵐電の車窓風景を楽しみながらいざ嵐山へ!

まず、京都の紅葉は多くの場所で11月中旬~下旬にかけて見頃を迎える。嵐山・嵯峨野と言えば、古くから貴族や文人達の別荘地とされた風光明媚の地だけに、京都市街から距離があるように思うが、電車に乗れば実はさほどの距離ではない。嵐山へは、JR山陰本線、阪急電車、そして「嵐電」の愛称で親しまれる京福電車の3線が利用できるが、今回は一部に路面電車区間もあり、車窓風景も楽しい嵐電で向かうことにする。

以前は嵐電に乗るには、京都駅からだと地下鉄を2路線乗り継がなければならず、やや不便だった。しかし、2016年4月に山陰本線の「太秦(うずまさ)」駅から徒歩約3分の場所に新駅「撮影所前」駅が開業。乗り換えも楽々だ。

2016年4月に開業した嵐電の「撮影所前」駅。JRとの乗り換えがスムーズになった

嵐山を"借景"とする庭園の紅葉

嵐山駅の改札を出ると、通りの反対側には「天龍寺」の広大な境内が広がっている。天龍寺は室町幕府を開いた武将の足利尊氏が、南北朝の争いで対立した後醍醐天皇の菩提(ぼだい)を弔うために創建した寺院で、京都五山の第一位に列せられた由緒ある寺院だ。

天龍寺は紅葉の本数が多く、紅葉の名所としてオススメだ

天龍寺で何と言っても有名なのは、鎌倉時代末から室町時代初期にかけて政治や作庭に活躍した禅僧の夢窓疎石(1275~1351年)が造営した、嵐山を"借景(しゃっけい)"とする曹源池庭園だ。借景とは、外の景色をあたかも庭園の一部のように取り込む作庭手法を言う。天龍寺は、参道から曹源池庭園、さらに北門にかけても、多くの紅葉が植えられており、紅葉の名所としてオススメ度が高い。

嵐山を借景とする天龍寺の曹源池庭園

●information
天龍寺
京都市右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場町68
アクセス: 嵐電「嵐山」駅下車、徒歩1分

竹林の道を歩き、大河内山荘へ

天龍寺北門を出ると、そこに広がるのは竹林の世界だ。青々と天高く伸びた竹林を見ると、とてもすがすがしい気分になる。この竹林の道を200mほど歩くと、間もなく「大河内山荘庭園」と看板が掲げられた立派な門が現れる。

嵯峨野の竹林の道は、外国人観光客にも人気が高い

ここは、戦前の時代劇スター・大河内傳次郎(おおこうちでんじろう、1898~1962年)の別荘跡。傳次郎自身が64歳で亡くなるまで、約30年もの歳月をかけて造営したという見事な庭園を鑑賞できる。

庭園は回遊式になっており、ぐるっと一周する間に、西から北にかけては保津峡や小倉山、東から南にかけては、比叡山や衣笠山、大文字山、京都タワーまでをも一望する絶景が楽しめるのだ。庭園の拝観料(中高生以上1,000円、小学生500円)には抹茶とお菓子の料金も含まれており、庭園の鑑賞を終えた後は、秋の風情を楽しみながらのんびり休憩しよう。

大河内山荘庭園より。やや遠くに比叡山と大文字山、手前には衣笠山や双ヶ岡が見える

秋の風情を感じながら、抹茶で一息

●information
大河内山荘
右京区嵯峨小倉山田淵山町8
アクセス: 嵐電「嵐山」駅下車、徒歩約15分

大河内山荘から北へ歩を進めれば、程なく右手にトロッコ列車の嵐山駅が見える。今回はトロッコ列車は眺めるだけ。歩いて北嵯峨を巡ってみよう。