理化学研究所(理研)と東京電機大学は10月17日、ミミズの筋肉組織を利用した小型ポンプを開発したと発表した。

同成果は、理研生命システム研究センター集積バイオデバイス研究ユニット 田中陽ユニットリーダー、東京電機大学 釜道紀浩准教授らの研究グループによるもので、9月22日付けのオランダの科学誌「Sensors and Actuators B, Chemical」オンライン版に掲載された。

同研究グループは今回、制御性・応答速度・収縮力に優れたミミズの体壁筋に着目。まず、フトミミズを輪切りにして開き、幅約1cmのシート状にして電圧6Vの電気刺激に対する収縮力を測定した。この結果、最大9.3mN、収縮するまでの応答時間は約0.3秒となった。これは一般の小型ポンプの素子と同程度の数値であり、ポンプの駆動素子として十分な力が得られたといえる。

また、同研究グループは、このミミズ筋肉シートを用いた小型ポンプを試作した。具体的には、微細加工技術によりポンプの土台となるマイクロ流体チップ上に幅・深さ0.2mmの流路と直径3 mmのポンプチャンバーを作製し、その上に筋肉の収縮力を伝えるプッシュバーを置き、さらにミミズ筋肉シートを載せて固定。同シートに、電圧6Vの電気パルスで3秒おきに連続的に刺激を与えたところ、シートの収縮によりチャンバー内の水が押し出されることを確認した。また、流量は5μL/分と、このサイズのポンプとしては、既存の圧電素子を用いたものに匹敵する機能を持つことを実証した。

今回開発されたポンプは、刺激に電気を用いているものの、動作のためのエネルギー源は生体の共通エネルギー源であるアデノシン三リン酸(ATP)であり、神経組織なども含めて、人工的にミミズと同様の構造を作ることができれば、将来的には電気刺激なしで駆動する可能性がある。同研究グループは今回の成果について、今後、超微小ポンプを開発していくうえでのモデルになると考えられるとしている。

ミミズポンプの構造と送液原理。(A)ミミズポンプを俯瞰した模式図 (B)(A)のX-Y断面図(画像提供:理化学研究所)

ミミズポンプの実証実験。シートの収縮により、水が左側からポンプを通って右側へ押し出されている(画像提供:理化学研究所)