東京工業大学(東工大)は9月26日、ビスマスを利用した精密集積型発光分子の開発に成功したと発表した。

同成果は、東京工業大学 科学技術創成研究院 ハイブリッドマテリアル研究ユニット/化学生命科学研究所 山元公寿教授、神戸徹也助教らの研究グループによるもので、9月22日付のドイツ科学誌「Angewandte Chemie International Edition」オンライン版に掲載された。

同研究グループは今回、独自開発していた「デンドリマー」と呼ばれる規則的に枝分かれを繰り返す樹状構造をした高分子を利用。同分子内に配置する塩化ビスマスをデンドリマー内に精密に集積させることで、発光特性を発現させた。

このデンドリマーは、金属を取り込める場所があらかじめ設計されており、塩化ビスマスを中心部から順番に決められた場所に結合させることができる。これにより、ある一定の濃度以上で発光強度が減少する濃度消光という現象を抑え、増やしたぶんだけ発光強度を高めることに成功。ビスマスの錯体は固体状態で濃度消光するのに対し、同発光デンドリマーは固体状態という極限の高濃度状態でも発光を保持した。

また発光は、デンドリマー内でビスマスの錯体が形成することで発現するため、ビスマス添加量の調整や酸化還元反応を駆使することで、発光強度の自在かつ可逆な制御も可能となっている。

同研究グループは、同発光デンドリマーについて、センサとして利用できるため、生体の重金属解毒防御機能などの解明に役立つとしているほか、今回の集積手法は種々の発光分子に応用できることから、ガラスやポリマーへ塗布することで高輝度発光材料が作成できると説明している。

デンドリマー集積による固体状態での発光特性