夕張市のように、行政側が苦心しながら最低限のサービス維持に努める一方で、住民に行政サービスの一部を肩代わりしてもらう自治体も出てきている。

島根県雲南市は、深刻な財源不足のため2005年に「財政非常事態宣言」を宣言。職員を2割減らすといったコストカットに着手した。将来的に予算も人員も増える見込みはないが、少子高齢化など市の問題は山積しており、市内の隅々までサービスを行き渡らせるのは難しいと考えた。

そこで考案したのが「住民組織」だ。市内を30の地区に分け、そこに住む住民全員を組織のメンバーにした。国からの借入金を活動資金として交付し、代わりに住民組織が行政のサービスを担うという仕組みだ。

住民組織の担い手がおらず、地域を縮小

雲南市の鍋山地区では、60代の住民7人が険しい山にある400世帯の水道検診を受け持つ。福祉サービスも兼ねているため、高齢者の見守り業務も行っている。ただ、この住民組織が開始されて10年が経過し、メンバーの高齢者が相次いで亡くなっているという。

「この先、地域を支えていけるのか」――。市の担当者には、住民たちの悲鳴が聞こえだしてきている。サービスの担い手がいなくなれば、集落の維持は困難になる。だが、行政側はその対処も住民に委ねたい意向を持っている。

「何もしなければ、極端な話になれば、消滅してしまうこともありえるわけでして、それはやりようだと思います。『消滅してしまいましょう』ということも選択肢としてありえる。どのように考えるかは、住んでいる方ご自身で考えていくこと」と市の担当者は話す。

鍋山地区は専門家のアドバイスを仰ぐことに決めたが、その内容とは「集落維持のため人口に見合った規模に生活圏を縮小する」ことだった。住民組織の担い手が少ない以上、それが現実的な判断だという。

この助言を受けて、住民があらためて地区の状況をつぶさに確認したところ、住宅や田畑が荒れ地に囲まれるように点在していた。これ以上、土地の荒廃が進めば、道の整備や高齢者の見守りが難しくなる。鍋山地区の住民は、地域の縮小を議論していく方針だという。

サービスを享受するだけではいられない将来

人口や行政サービスが現在進行形で縮小している現実。番組放映後は、その正視しがたい事態に不安や絶望に似た感情を抱く人たちが多かった。以下は一例だ。

「夕張市の現状や地方自治体の住民組織のあり方を見ると、恐ろしくて仕方ない」

「『縮小』や『消滅』が当たり前に語られる日本では、若者が将来に対して悲観的になるのも無理はない」

「NHKスペシャルが精神を削ってくる」

「NHKスペシャルで心が折れそうになる」

「未来はもっと明るいと思っていたが、とても切なくなる」

雲南市のような住民組織は現在、各地で1,600以上あるそうだが、国は今後4年間で3,000に増やそうと計画している。私たちの多くは近い将来、行政によるサービスを享受するだけの存在ではいられなくなる。自分たち一人ひとりが、自らの住む自治体の課題に向き合わないといけなくなる。

正社員と非正規社員の賃金の格差是正や、共働き世帯が子育てをしやすいような会社の制度づくり、保育に関わる施設や人材の充実……。国が目を背け、先送りし続けている課題が暗示するものは、「縮小ニッポン」以外の何物でもないだろう。

※写真と本文は関係ありません