氷のような冷たいものに触れると「痛い」と感じるメカニズムを京都大学の研究グループが明らかにした。痛みを感じるセンサーが敏感になって細胞から分泌されたわずかな活性酸素に反応して「冷たさ」を「痛み」に変換しているという。研究成果は15日付の英科学誌電子版に掲載された。
京都大学大学院薬学研究科の金子周司(かねこ しゅうじ)教授、医学部附属病院の中川貴之(なかがわ たかゆき)准教授、薬学研究科博士課程の三宅崇仁(みやけ たかひと)さんらの研究グループによると、「熱い」「ひんやりする」といった温度覚のメカニズムは明らかにされつつあるが、氷水に手を入れると痛みに似た感覚になる理由はまだ謎だった。金子教授らは、抗がん剤の「オキサリプラチン」が、冷たいものに触れると痛みに似たしびれを感じるという変わった副作用を起こすことに着目。オキサリプラチンと化学構造が似た薬剤をヒトの細胞に加える実験やマウスを使った実験などを続けた。
その結果、氷や氷水のようにかなり冷たいものに触れると、細胞はオキサリプラチンを与えられたような状態(プロリン水酸化酵素抑制)になって痛みセンサー「TRPA1」が過敏な状態になる。この冷刺激によって細胞からわずかに分泌される活性酸素を、敏感になったセンサーがしっかり感知、反応して痛みを感じさせるという一連のメカニズムが分かったという。
今回の成果について研究グループは、大腸や膵臓、胃などのがんに投与されるオキサリプラチンの副作用解明のほか、温度覚に関する研究を今後も進めることで冷え性の治療薬の開発などに役立つ可能性もある、としている。
関連記事 |