映画監督に、出演役者の印象を伺っていく「監督は語る」シリーズ。今回とりあげるのは、川口春奈(21)だ。雑誌『ニコラ』のモデルとしてデビューしたのち、若手女優の登竜門である「三井のリハウス」CM(09)などで注目を受け、ドラマ『金田一少年の事件簿』(13~14)、『夫のカノジョ』(13)、映画『好きっていいなよ。』(14)、『クリーピー 偽りの隣人』(16)など、さわやかな作品から骨太な作品まで幅広く活躍している。

最新映画『にがくてあまい』では、野菜嫌いなキャリアウーマン・江田マキ役に挑戦。実年齢より少し上の設定ながら、コメディタッチのなかで仕事に情熱をかける姿や家族との絆を深める姿を好演しているが、監督からはどのように映ったのだろうか。

草野翔吾
1984年生まれ、群馬県出身。早稲田大学社会科学部在学中より映画制作を始める。在学中に監督した長編映画『Mogera Wogura』(07)は、学生映画ながら一般劇場で上映され、話題を呼んだ。2012年に公開した長編映画『からっぽ』が、第4回沖縄国際映画祭パノラマスクリーニング部門や第27回高崎映画祭"若手監督たちの現在"を始め、国内外の映画祭で上映されている。

川口春奈の印象

すごく表情豊かで、天才肌の方だなと思いました。感性で演じられる、爆発力のあるお芝居のできる方です。今回は最初に川口さんが脚本を読んで思ったであろう演技プランと、変えてしまったところもあったのですが、それは「もっともっと引き出しがある」というのを感じさせられたからなんです。いろいろ試させてもらうと、何倍にも爆発して返ってくるので面白かったですね。

今回コメディですが、コメディエンヌって、難しいと思うんですね。一筋縄ではいかないですが、川口さんはきっちり演じ切ってくれました。一番良かったのはやはり表情です。撮影させてもらう前までは、もっと正統派なイメージもあったのですが、パッとした表情や表現力、コメディ的なセンスがとてもすごくて、存分に発揮していただいたと思います。原作よりは年齢設定も下げてるんですけど、この間まで高校生役だった川口さんの大人な一面も映っていると思いますよ。

撮影現場での様子

川口さんはけっこう、食いしん坊じゃないかと(笑)。食事シーンも、女優さんって、本番の時しか実際に食べないイメージがあるんですが、川口さんはテストの時からモリモリ食べていました。料理も、実際においしかったんでしょうね。

千葉の農家での撮影中に、気付いたら川口さんが"岡持ち"を持ってスタッフに中華料理を配ってくれていた時もありました。経緯はわからないんですけど、多分中華料理が食べたくなって、でも周りに何もないから中華料理屋さんを探して、僕らの分も注文してくれたのかな? 雨がいっぱい降っていて、現場的にも気分が落ちてしまっていたんですが、川口さんのキュートな出前の姿にすごく盛り上がりました。飾り気がなくて、気の使える方だなと思いましたね。

映画『にがくてあまい』でのおすすめシーン

いっぱいあるんですけど、料理が美味しそうなのは、クリームシチューを食べるシーン。感動しましたね。また、お母さん役の石野真子さんとの2人のシーンは、カットをかけるの忘れるくらい見入ってしまいました。撮っていることを忘れて、我に返って声をかける、みたいな。すごく自然に、本当に親子のように見えたんです。

(C)2016映画「にがくてあまい」製作委員会