情報通信研究機構(NICT)は9月1日、脳情報通信融合研究センター(CiNet)において、筋肉のボリューム(大きさ・形状)と干渉(ぶつかり合い)による変形を考慮した新しい仮想人体筋骨格モデル「Def Muscle」を開発したと発表した。

筋骨格モデルは、現在、人間工学やバイオメカニクス関連分野において幅広く用いられており、ヒトの運動を対象にしたあらゆる分野で重要なツールとなってきている。しかし、従来の筋骨格モデルでは、筋肉をボリュームのない直線や折れ線として単純化してしまっているため、筋が骨の中に埋まったり、本来表層にあるべき筋が深層の筋の内部に埋まったりといった不自然な状況が起きてしまう場合があった。

今回開発した仮想人体筋骨格モデル「Def Muscle」

今回の研究では、この問題を解決するため、筋肉のボリュームおよび干渉による変形を考慮した新しいタイプの筋骨格モデルの開発に挑んだ。ボリュームの変形には多大な計算コストがかかり、ボリュームモデル開発の大きな障壁となっていたが、近年急速に発展したGPU並列プログラミング手法を取り入れることで、肩周辺の33本の筋肉のボリュームと干渉を考慮したモデルを、GPUを搭載したパーソナルコンピュータで動作させることに成功した。

同技術の開発により、従来モデルでは表現しきれなかった肩・体幹などの複雑な筋肉の位置関係および筋力の作用ベクトルを表現できるようになり、運動神経科学やリハビリ・スポーツなどのバイオメカニクス関連分野における運動解析の精度が向上し、特に肩こりやスポーツ肩障害の予防研究への応用が期待できる。

「Def Muscle」に関する知的財産権は、スリーディー社にライセンスされ、同社によって2016年中にプログラミングソフトウェアとして発売される予定。また、肩周辺群の形状サンプルは無償で公開し、部位が拡張された際は随時公開してくとしている。

姿勢に応じた筋肉の変形