三菱重工業(MHI)は7月26日、同社飛島工場(愛知県飛島村)においてH-IIBロケット6号機のプレス公開を実施した。同機は宇宙ステーション補給機「こうのとり」(HTV)6号機を搭載し、10月1日(土)に打ち上げられる予定。今後、7月30日に同工場より出荷、船で運び、8月1日未明に種子島宇宙センターに搬入されることになっている。

H-IIBロケット6号機。手前が第1段で奥に第2段が見える

H-IIBは日本最大のロケットである。全長は56.6m。H-IIAからは第1段が強化されており、エンジンは1基から2基に増え、直径は4mから5.2mへと太くなった。第1段が大きくなった一方で第2段はそのままのため、H-IIBはくびれのある独特のスタイルになっている。フェアリングはHTV用の5S-H型を使用。固体ロケットブースタ(SRB-A)は4本搭載する。

H-IIBロケット6号機の概要

2009年9月の初飛行以来、H-IIBロケットはこれまでに5機が打ち上げられており、すべて成功。搭載したのはいずれもHTVで、国際宇宙ステーション(ISS)に物資を届けるという任務を完璧にこなした。

6号機の打ち上げ予定時刻は深夜2時16分頃。HTVの場合、目的地がISSであるため、ISSの軌道面が種子島を通過するタイミングで打ち上げる必要がある。ズレると軌道面の修正で燃料を消費してしまうため、打ち上げ時刻は秒単位で指定される。最新の軌道情報で決定するため、正確な時刻が発表されるのは打ち上げの数日前だ。

打ち上げ後、15分ほどでHTVを分離。その後、ロケットの第2段は地球を1周してから逆噴射、軌道を離脱して南太平洋上に落下させる。これは、第2段をデブリにさせないための対策で、H-IIBロケットでは、2号機から毎回実施している。

第2段の制御落下。2号機から実施している

10月1日に打ち上げられた場合、ISSへの到着は10月4日になる予定。HTV6号機では、ISS用のリチウムイオンバッテリ6個(250kg/個)を運ぶことが注目されている。現在、ISSで使われているニッケル水素バッテリの寿命が近づき、交換が必要になっているが、バッテリを搭載できるのはHTVのみ。今後、HTV9号機までで合計24個を輸送する計画だ。

またHTV6号機では、ISSから分離した後に実施する「導電性テザー実証実験(KITE)」にも注目したい。この実験では、HTVから長さ700mものテザー(ひも)を伸展。そこに電流を流し、電気的・物理的な特性を計測する。導電性テザーは、将来のデブリ回収システムとしての応用が検討されている。その基本データを取得するのが目的だ。

ロケットに搭載するのはHTV6号機

ロケットの機体については、5号機までとほぼ同じ。細かいコストダウンは毎回行っているが、6号機では、H-IIAロケット29号機で適用した対策を実施。照明装置の専用電池を削除している。コストダウンの金額としてはそれほど大きくはないが、「チリツモの世界なので、たとえ100万円単位でもトライする」(二村幸基技師長)とのこと。

H-IIA/Bロケット打ち上げ執行責任者の二村幸基技師長

H-IIA/Bロケットプロジェクトマネージャの徳永建氏

今回、公開されたのはH-IIBロケットの第1段と第2段(まとめて「コア機体」と呼ばれる)。同工場での機能試験を終え、現在、出荷準備を行っているところだ。SRB-Aとフェアリングは、すでに射場に搬入済み。

第1段

第2段

なお、気象衛星「ひまわり9号」を搭載するH-IIAロケット31号機がすでに種子島に搬入されているが、こちらの打ち上げ日は現在まだ調整中。H-IIBロケット6号機と打ち上げの順番が入れ替わる可能性もあるとのことで、その場合は、ある程度まで作業を進めた段階で一旦中断、H-IIBの打ち上げ後に作業を再開することになる。

種子島宇宙センターの大型ロケット組立棟(VAB)には、H-IIAロケットとH-IIBロケットを同時に立てて整備するキャパシティがある。ただ、一部共通の設備があり、それを使う作業は同時にできないため、上記のような切り替えが必要になるそうだ。

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