厚生労働省は7月27日、2015年度の「使用者による障害者虐待の状況等」の結果を発表した。同省は「障害者虐待防止法」に基づき、虐待の情報が寄せられた事業所を対象に2013年度より毎年調査を実施している。

小規模事業所で虐待が多発

障害者を雇用する事業主や職場の上司など、いわゆる「使用者」からの虐待が認められた障害者は前年度比100.8%増の970人と、過去最悪を更新。同省は「2015年度から件数の計上方法を変更したことに加え、障害者虐待防止法の周知が進み、障害者本人や親族等からの相談が増加してきたことが要因ではないか」と話している。

虐待の内容は、賃金不払いなどの経済的虐待が855人と最も多く、次いで心理的虐待が75人、身体的虐待が73人、放置等による虐待が15人、性的虐待が10人と続いた。

虐待を行った使用者は519人。内訳は、事業主が450人、所属の上司が48人、所属以外の上司が2人、その他が19人だった。

通報・届け出のあった事業所は同34.5%増の1,325事業所。通報・届け出の対象となった障害者も同50.9%増の1,926人に増えた。使用者による障害者虐待が認められた事業所は同69.6%増の507事業所に拡大した。

通報・届出の対象となった障害者(出典:厚生労働省Webサイト)

虐待が認められた事業所を業種別にみると、製造業が192件(37.9%)と最多、以下、医療、福祉業が106件(20.9%)、卸売業、小売業が49件(9.7%)と続いた。

規模別では、5~29人が269事業所(53.1%)、5人未満が81事業所(16.0%)、30~49人が77事業所(15.2%)となり、50人未満の規模で計427事業所と全体の84.2%を占めた。同省は「労務管理が不十分であることや理解不足が相まって、(小規模事業所で)虐待が多い傾向になるのではないか」と推測している。