東北大学は7月21日、形状記憶特性を示すマグネシウム(Mg)合金の開発に成功したと発表した。

同成果は、東北大学大学院工学研究科知能デバイス材料学専攻の博士後期課程 小川由希子氏、須藤祐司准教授、安藤大輔助教、小池淳一教授らの研究グループによるもので、7月22日付けの米国科学誌「Science」に掲載される。

形状記憶特性は、チタン(Ti)-ニッケル(Ni)系、銅(Cu)系、鉄(Fe)系、ニッケル(Ni)系、コバルト(Co)系およびチタン(Ti)系など、さまざまな合金系においてこれまでに見出されてきたが、マグネシウム(Mg)などの軽量元素を主体とする超軽量合金についての報告はなかった。

同研究グループはこれまでに、Mgにスカンジウム(Sc)を添加したMg-Sc合金が、従来Mg合金の結晶構造である最密六方構造に加え、体心立方構造を取り得る点に着目し、その相変態を利用したMg合金の高機能化に関する研究を行ってきており、Mg-Sc合金は、従来の最密六方構造型Mg合金と比べて高強度・高延性のバランスに優れることを見出してきた。

今回、同研究グループはこの研究のなかで、体心立方構造型Mg-Sc合金がマルテンサイト変態という相変態を起こし、形状記憶特性を発現することを発見。Mg-20at%Sc合金の場合、 -150˚Cの低温下において4%以上の超弾性歪みを示すことを確認している。

同研究グループによると、同Mg合金は、従来のTi-Ni系の形状記憶合金(ニチノール)に比べて約70%軽く、航空・宇宙材料など軽量性が求められる工業製品への適用が期待できるという。今後は、同Mg合金の実用化に向け、合金組成の最適化による動作温度の上昇や生体適合性などを評価していく予定であるとしている。

-150˚C の低温下で変形を加えた後、除荷した際の応力-ひずみ曲線。3%ひずみに対し、約94%の形状回復率を示す