吉野家の“ちょい飲み”が進化する。スマートフォン上に焼酎とビールの仮想ボトルをキープし、全国の店舗で飲むことができる「デジタルボトルキープサービス」が始まったのだ。顧客に「楽しく飲んでもらう」のが同サービスを導入する最大の狙いと河村社長は語るが、競争が激化するちょい飲み市場において、ボトルキープへの対応は他社との差別化につながるのだろうか。

吉野家でボトルキープできる面白さ

吉野家は7月20日に同社公式アプリ「吉野家アプリ」の配信を開始。「デジタルボトルキープ」は同アプリの目玉となるサービスだ。ボトルキープできるのは焼酎と生・瓶ビールの2種類。ボトル1本で10杯飲むことができる。

デジタルボトルキープ、歩数に応じてクーポンが取得できる「歩く割」(画像右側)、弁当予約、冷凍牛丼の具などを購入できる通販といったサービスをアプリに集約した吉野家

価格は焼酎が2,500円、ビールが3,000円となる。通常価格で10杯飲むよりも、ボトルで飲むと500円お得だ。料金はボトルを入れる際に店舗で支払う。ボトルの有効期限は6カ月となっている。

「楽しく飲んでもらいたいというのが一番」。アプリ発表会に登壇した吉野家の河村泰貴代表取締役社長は、デジタルボトルキープ導入の理由についてこう語った。考えてみると、デジタルボトルキープの仕組みは、1杯あたり50円の割引きが受けられる10枚綴りの回数券を発行するのと変わらないが、「吉野家にボトルを入れる」ということ自体を面白がってもらいたいというのが同社の考えのようだ。

スマホ上でボトルキープができる利点はいくつかある。居酒屋などでボトルを入れる場合と比較すると、全国(540店舗)どこでも飲めるのはデジタルならではのメリットだ。例えば仕事帰りに職場近くの吉野家でボトルを入れて、週末は自宅近くの店舗で続きを飲むといった使い方も可能となる。ビールのボトルキープもデジタルだからこそ可能なサービスといえるだろう。

「ちょい飲みの先駆け」(河村社長)を自負する吉野家が始める新サービス。お得感もあるし便利そうだが、この取り組みにより、ちょい飲み市場における吉野家のポジションはどのように変化するだろうか。