2016年7月13日、日本マイクロソフトは18歳から25歳までを対象に自身のビジョンと独自のリーダーシップ精神を育成し、社会と自分とのつながりを再確認する「TOMODACHI -Microsoft iLEAP Social Innovation and Leadershipプロジェクト(以下、TOMODACHIプロジェクト)」の発足会を品川本社で開いた。プログラムに参加する若者は2016年8月20日から約4週間、米国のシアトルにある米国NPO法人iLEAPで研修を受け、新たなライフスタイルや価値観を見いだす。

公益財団法人米日カウンシル-ジャパン Irene Hirano Inouye氏

今回の取り組みは公益財団法人米日カウンシル-ジャパンが中心に位置する。そこにMicrosoft/日本マイクロソフトが協力し、若者の人材育成を行う米国NPO法人iLEAPが各種プログラムを実施して、次世代のグローバル人材を育成するというものだ。その背景にはMicrosoft CEOであるSatya Nadella氏が今年1月に発表した「Public Cloud for Public Good(今後3年間で7万の非営利団体組織に早計10億ドル相当のクラウドサービスを寄与する)」の取り組みが大きい。

さらに関係者は2015年10月に就任したMicrosoft President & CLOのBrad Smith氏が持つフィランソロフィー(人類愛に基づいて人々の生活などを改善する利他的活動や奉仕的活動など)も影響しているという。Smith氏は多様性と慈善活動に関する取り組みに多く関わっており、先の発表もSmith氏がPresidentの席に就任した結果の1つなのだろう。

米国NPO法人iLEAP Executive Director & Founder Britt Yamamoto氏

さて、TOMODACHIプロジェクトは年2回、3年間にわたり18歳から25歳までの日本国籍を持つ若者合計150名を対象に、米Microsoft本社における研修や、ワークショップなどを通じて社会課題解決に向けたITサービスの活用、iLEAPやNPO5団体へのインターシップを通じたリーダーシップ研修などを行う。なお、日本帰国後も国内NPOへ研修結果を活かした実習を行う予定だ。

TOMODACHIプロジェクトについて、公益財団法人米日カウンシル-ジャパン Irene Hirano Inouye氏は、「本プロジェクトは東日本大震災に端を発し、東北の復興復旧から始まった。最終的には日米の指導者となる若者を育成し、支援することを目標としている」と説明。米国NPO法人iLEAP Executive Director & Founder Britt Yamamoto氏は、「一般的に若者育成プログラムは都心在住者や男性が多いものの、今回は3分の2が女性、半数が首都圏以外からの申し込みだった。申請者である(日本の)若者のクオリティが変化している」と応募状況について語った。

Microsoft CVP & Deputy General Counsel Rich Sauer氏

Microsoft CVP & Deputy General Counsel Rich Sauer氏は、「クラウド技術の威力はNPOにも活用すべきだ。TOMODACHIプロジェクトの鍵は人材にあるため、米Microsoft本社でも若者のリーダーシップ育成を支援し、起業家精神を日本に持ち帰ってもらう」とプロジェクトの意義を説明する。発足会に同席した日本マイクロソフト 執行役員 政策渉外・法務本部長 アシスタントジェネラルカウンセルのSusanna Makela氏も、「Industry 4.0は我々の日常的なコミュニケーションやビジネススタイルに大きな変化をもたらす。その中で誰もが技術革新の恩恵に授かれるような、ソーシャルイノベーション(社会的革新)を実現できる人材の育成が必要」とプロジェクトの意義を語った。

プログラムを受講したShota Eda氏

TOMODACHIプログラムを受講したShota Eda氏は、「プログラムは私の人生を変えてくれた」と語り、社会的革新を実践するMicrosoft社員が良きアドバイザーであると同時に手本になってくれたと述べている。また、同プログラムを通じた経験や人間関係を活かして、個人間を依頼でつなぐサービス「TASKEYA」プロジェクトを立ち上げた。同プログラムを受講したSayuri Ishikawa氏は、受講前の自分を振り返り、「典型的な優等生だった」という。同プログラムを通じて「グループシェアリングを通じて、今まで考えなかったことを自分に問いかけられるようになった(Ishikawa氏)」と語り、将来は他の人々を支援する立場で、学んだことを次世代のリーダ育成につなげたいと抱負を語った。

同じく受講したSayuri Ishikawa氏

関係者として発足会に参加した文部科学省 国際統括官 森本浩一氏は、「エンジニアの発明は環境から刺激を受けて、独創性とチャレンジ精神が生まれる。有望な若者が米国のビジネスに触れることで、経験を基にキャリアを積み上げていく。その結果として、帰国後に新しい視点を活かして抜本的なチャレンジしてもらうことが望ましい」。文部科学省 大臣補佐官 鈴木寛氏も2016年5月に開催したG7倉敷教育大臣会合の採決内容を引き合いに出し、「若いリーダーシップの育成が重要。(TOMODACHIプロジェクトは)日本のプログラムだが、中韓や台湾、シンガポールなど東アジアに間口を広げれば、若者に良い影響を与えられる」と展望を語った。

日本マイクロソフト 政策渉外・法務本部 渉外・社会貢献課長 龍治玲奈氏は「グローバル企業である自社の強みを活かして、若者に米国の『今』を学んでもらい、その成果を今後の日本に活かしてほしい」と語る。社会的革新は一長一短で実現することは難しい。だからこそTOMODACHIプロジェクトのような取り組みは、未来の日本を築く大きな礎(いしずえ)となるだろう。

阿久津良和(Cactus)