アクセンチュアは12日、企業・組織がオープンイノベーションを通じデジタル変革を実現する目的で、支援拠点として「アクセンチュア・デジタル・ハブ」を東京都港区赤坂に新設した。

「アクセンチュア・デジタル・ハブ」内観。ワークショップ向けのエリアを中心として、アナリティクスを行う「左脳」を描いた部屋、CX/UXデザインを行う「右脳」が描かれた部屋が設けられている

「アクセンチュア・デジタル・ハブ」は、同社が世界各国で培っているデジタル変革の知見やノウハウのほか、国内外のスタートアップ企業やクリエイター、アクセラレーター、ベンチャーキャピタリスト、大学の研究者、企業のR&D部門など、外部パートナーが有する優れた技術やアイデアを結集するための拠点。シリコンバレー(米国)、ミラノ(イタリア)、北京(中国)などに設置されており、今回新設された東京は日本で初めての拠点となる。

インテリアデザインは他国のデジタル・ハブと共通ではなく、東京向けにデザインされている

同社 執行役員 デジタル コンサルティング本部 統括本部長を務める立花良範氏は、日本初のデジタル・ハブ設立の経緯について、「第四次産業革命とも言われ、マーケットの変化が加速しているこの時代に、アクセンチュアの伝統的なやり方、いわゆる大企業をお客様としたコンサルティング等だけでは、新しいイノベーションは起こせません。これはグローバルでの認識です。過去に日本でこうした施設を設置してきてはいませんでしたが、今回はそれに足ると判断しました」と語った。同施設に関して、企業・団体からの利用料の徴収は考えておらず(長期利用に関しては個別に相談)、事前連絡さえあれば気軽に訪れることが可能なオープンな場として運用していくという。

デジタルコンサルティング本部 統括本部長 立花良範氏

同施設を統括するデジタル コンサルティング本部 マネジング・ディレクター 保科学世氏「アクセンチュアの人員をフル活用して、イノベーションを目指していきたい」

この施設には、デジタルマーケティングやUX(ユーザーエクスペリエンス)デザイン、アナリティクス(人工知能や機械学習、マルチモーダル学習など)、セキュリティなど、各領域に精通したアクセンチュアの専門家が常駐。こうした体制により、企業や組織がスタートアップ企業と協業して新規事業を創出したり、社会や地域の課題解決に向けたエコシステムの構築などを行ったりと、オープンイノベーションの取り組みを通じ、デジタル変革をよりスピーディに推進することが可能になるとのこと。

セキュリティソリューションエリア

コラボレーションエリアにはバーカウンターや電源つきデスクなど、さまざまなタイプの座席を設けた

インテリアデザインを手がけたのは、デジタルコンサルティング本部 シニア・マネジャーのエズラ・パーク氏。メインコンセプトは「つながる(connect)」で、社内と外部のつながり、右脳と左脳をつながり、デジタルとアナログのつながりを表現しており、部屋の各所にそれらを象徴する工夫が凝らされている。施設のシンボルは部屋の中央に設置された望遠鏡で、現状のトレンドをのぞきこみ、未来のオポチュニティ(機会)につなげるという意味もこめられているそうだ。

電光掲示板は人が触ると明滅するものをあえて採用。「左脳」「右脳」とを示すふたつの会議室をつなぐ電球のシンボルがアイデアを象徴している

エントランスには、ARアプリ経由で鑑賞すると動的に変化するアートが。今後、施設内にファインアートを設置する計画も進行中だ

この施設には可動式のコラボレーションエリアが設けられており、社内外のセミナーやワークショップを行うことが可能。このほか、同社が提供するデジタルソリューションや、分析のプラットフォームのほか、アクセンチュアのサイバー・フュージョン・センターで提供しているサイバー攻撃対策サービスなど、先端デジタル技術を体感できるデモ設備も設置されている。

施設の公開と同時に、一般社団法人未踏と同社の協業が発表された。優秀な技術者を育成する国家プロジェクト「未踏事業」で輩出されたクリエーターや起業家などと連携してオープンイノベーションを促進する。

具体的な取り組みとして、IoTや人工知能(AI)、ロボティクス、 ブロックチェーン技術などの領域において卓越した能力を持つ未踏人材が、同社の顧客に対してワークショップや新しい製品やサービスのプロトタイプ作成の支援などを行う。加えて、金融テクノロジー(フィンテック)をはじめとした「X-Tech領域」においても、未踏人材との協業による新規事業の戦略策定から、新しいソリューションの提供や新会社の立ち上げまでを、同社のコンサルタントが一気通貫で支援するとのこと。

対外的に開かれた場を設けることで、同社がさまざまな企業・団体がスタートアップ企業とつながる「ハブ」となるべく設置された新たな場で生まれるであろう事例に今後注目していきたい。