富士通、米オラクル、日本オラクルは7月6日、クラウド事業における戦略的提携を行うことで合意したと発表した。これにより、富士通の国内データセンターから日本企業とその海外拠点に「Oracle Cloud」を提供するほか、富士通のクラウドサービス「FUJITSU Cloud Service K5」のオプションとして「Oracle Cloud DB Service」を提供し、「Oracle HCM Cloud」を富士通グループで採用・外販を行う。富士通によるOracle Cloudの提供は2016年第4四半期に開始される予定。

説明会には、 富士通からは代表取締役会長の山本正已氏が、また、オラクルからは経営執行役会長 兼 CTOのラリー・エリソン氏が参加し、今回の発表が両社にとって重要であることがうかがえた。

富士通 代表取締役会長 山本正已氏

米オラクル 経営執行役会長 兼 CTO ラリー・エリソン氏。説明会には、サテライト中継で参加

富士通の山本氏は、両社のパートナーシップがハードウェアとソフトウェアにわたる広範なものであるとともに、30年という長い年月に及ぶ強力なものであることを強調したうえで、「今回の提携は、昨年4月に、エリソン氏が来日した際に生まれ、1年かけて練ってきたもの。狙いは、エンタープライズ領域におけるクラウド事業の強化とオラクルの顧客のクラウドへの移行に対するニーズへの対応にある」と述べた。

オラクルのエリソン氏は、「今回の提携により、企業に対する技術の届け方が変わる。企業はデータセンターにコンピュータを運びいれ、そこでアプリケーションを開発して運用していたが、ソフトウェアとハードウェアをクラウド上でレンタルするようになる。また、日本企業はパッケージを使ってこなかったが、これからはパッケージのユーザーになるだろう」と語った。

富士通 執行役員専務 デジタルサービス部門長 兼 CTOの香川進吾氏

提携内容の詳細については、執行役員専務 デジタルサービス部門長 兼 CTOの香川進吾氏が説明を行った。

香川氏は初めに、提携の対象となっている同社の「K5」の商談と稼働の状況として、「2015年12月半年で1000件の商談があり、180システムが稼働していること」「既存のシステムからの移行の割合が52%、SoR(Systems of Record)の割合が72%であること」を明らかにした。こうした状況から、顧客のクラウドファーストの意識やニーズが高まっていることがわかったという。

今回の提携により、 富士通の顧客は「Oracle Cloud DB Service」を直接利用可能になるともに、K5のポータルから利用できるようになる。 香川氏は、K5のオプションとしてOracle Cloud DB Serviceを利用できるメリットとして、富士通によるワンストップのサポートを受けられること、K5のポータルでいつでも利用と追加が可能であることを挙げた。

「Oracle HCM Cloud」については、富士通グループとしてタレントマネジメント領域から活用を初め、国内の富士通のデータセンターでセキュアに人事データを管理し、社内での利用を通じて得た知見やノウハウを、顧客へのサービス提供に生かしていく。

香川氏は、今回の提携によって顧客が得られるメリットについては次のように語った。

日本オラクル 取締役 代表執行役社長 兼 CEOの杉原博茂氏

「われわれのクラウドにより、既存のシステムを確実かつ安全に移行することができ、その結果、運用コストを削減し、競争力を強化することができる。クラウドへの移行により、35%の運用コストが削減できると言われている」と述べた。国内のデータセンターを利用し、富士通がワンストップでサポートすることで、基幹システムのデータを国内に置きつつ、クラウドに移行して安心して利用できる。加えて、国内のオラクルの顧客に向けては、AI、IoT、ビッグデータなどの先端技術を活用したイノベーションを付加価値として提供できる」

日本オラクル 取締役 代表執行役社長 兼 CEOの杉原博茂氏は、「両社の英知を集約して、少子高齢化など、日本の企業が直面する課題を解決していく。日本の企業にとっては"安心・安全"が重要であり、われわれは30年間培ってきた協力関係を基盤として、安心で安全なクラウドを提供するとともに、エンタープライズクラウドとしてレベルの高いものを提供する」と語った。