独立系半導体ナノエレクトロニクス研究機関であるベルギーimecは6月22~24日に独ミュンヘンで開催された太陽光発電技術専門見本市「Intersolar Europe」併催の技術コンファレンスにて、高効率の「BiPERT(Bifacial Passivated Emitter,Rear Totally-diffused:表裏両面受光・N型不動態化エミッタ・リア・トータル拡散)太陽電池」を発表した(図1)。

図1 両面受光型太陽電池BiPERT (出所:imec)

今回、裏面変換効率を表面変換効率にほぼ等しくなるまで向上させることができたため、今後、このタイプのセルで作られた太陽光発電(PV)モジュールのエネルギー収量を大きく向上させる可能性が出てきたとimecは主張している。

両面受光型太陽電池は、パネルの前面側に入射する光だけでなく、周辺からの反射などでパネルの裏側に到達する光も捕捉する。さらに、低入射角の日の出や日没の光も補足できるので、一般には前面への入射光に比べて10-40%の光を裏面で補足している。

今回、imecが発表したBiPERTセルは、基板にn型チョクラルスキーSi結晶を用い、試作品のサイズは239cm2。Ni/Agめっきによる極薄(<5μm)コンタクトはあるが、表裏両面にバスバ―がないので、見た目も美しい上に、光学的な遮蔽部分がない。試作結果で、表面の変換効率に対する裏面の変換効率の比(=Bifaciality)は97%とほぼ100%ともいえる値が得られている。一般にはBifacialityは80~90%程度である。

具体的には表面で得られた電流は41.2mA/cm2だったのに対して裏面の電流はその97%に相当する39.8mA/cm2が得られた。imecのBiPERTセルは、標準化された表面受光のみの条件下で(両面受光のメリットを生かさぬ状態で)22.6%の変換効率が得られた、「セルプロセスを最適化し、フロントエミッター構造を採用すれば変換効率はさらに向上できるだろう。裏面からの受光分が表面の15%しかない場合でも、このBiPERTの両面受光時の変換効率は26%に達する」とimecの開発担当者は言う。

imecは人々がより良い生活を送れるような持続可能な社会を実現するための研究をすることをミッションとしており、ICT、ヘルスケアと並んでエネルギーを3大研究テーマの1つに上げている。同社は、今後とも持続可能なエネルギーとして、さまざまなタイプの革新的な太陽光発電の研究に全力で取り組むとしており、Intersolar Europeでも「持続可能なエネルギー」を強調していた(図2)。

図2 Intersolar Europeにおけるimecのブース (出所:imec)