ただのストレスがある日突然、「キラーストレス」となって私たちの生命を脅かす可能性があるという

NHKは6月18日、「あなたを蝕むストレスの正体 ~こうして命を守れ~」と題したNHKスペシャルを放映。普段生活をするうえで必ず付き合うことになる「ストレス」が、場合によっては「キラーストレス」となり、私たちを死に至らしめるという事実やそのメカニズムなどを紹介した。

「ストレス社会」と呼ばれる現代においてストレスと無縁な日々を過ごすことは至難の業だけに、放映後には視聴者のさまざまな反応が見られた。

カギとなる存在は脳の扁桃体

私たちの多くがストレスを感じやすい対象の一つに「仕事」がある。NHKの世論調査によると、実に84%もの人が、仕事でストレスを感じていると回答したという。生きていくには職務をこなして賃金を得ることが不可欠となるだけに、大半の人が「生きるためにストレスを感じざるをえない」という状況にあると言える。

では、ストレスを感じると私たちの体はどのような反応を示すのだろうか。ワシントン大学の研究によると、人間はストレス下に置かれると脳にある恐怖や不安を感じたときに活動する「扁桃体」が反応し、その反応が身体のさまざまな箇所にも波及するという。

例えば、副腎からはストレスホルモンが分泌されて心拍数が増える。さらに血液も固まりやすくなったり、自律神経が興奮して血圧が上昇したりする。これがいわゆる「ストレス反応」だ。これは狩猟時代の名残と考えられており、「獣を見つけた際に瞬時に体を動かしやすくする」「出血後にすばやく血を凝固させる」といった点が獣相手にはプラスに作用していた。

だが、狩りをしない現代においてはマイナスに働いている。ストレス反応の対象は獣から「仕事におけるプレッシャー」などに変わり、反応そのものは私たちのDNAに組み込まれたままとなっている。そして、これらのストレスが一度に複数重なると「キラーストレス」となり、私たちの体は変調をきたす。

番組内では実際にキラーストレスで脳出血になった女性を紹介。過労と睡眠不足のところに、親類を亡くした精神的ショックが加わり、発症したとされている。複数のストレスが重なるとストレスホルモンが体内に大量に蓄積され、心拍数が増えて血圧が異常に高くなる。その結果、血管が耐えきれずに今回のように破裂するという仕組みだ。

がん細胞の増殖にも関係するストレス

ストレスによる悪影響はこれだけにとどまらない。ストレスによる心身への負荷は、がん細胞を増殖させるという研究も報告されている。

オハイオ州立大学の研究チームは、ストレスホルモンで働き始める「ATF3遺伝子」と呼ばれる免疫に関わる遺伝子に着目。同遺伝子と乳がん患者の生存率との関係を調べたところ、同遺伝子が働いていない場合は生存率が85%だった一方で、働いていると45%にも低下したという。

同遺伝子は普段、免疫細胞内で「スイッチoff」の状態で眠っている。だがストレスホルモンが増え、免疫細胞を刺激しだすと「スイッチon」の状態になる。すると免疫細胞ががん細胞の攻撃をやめてしまい、がん細胞が増殖しやすくなる。ストレスホルモンが減れば、スイッチoffの状態になって免疫細胞が再びがん細胞を攻撃するが、恒常的にストレスホルモンが多い状態だと、がん細胞の増殖に歯止めがきかなくなるとのこと。