2015年12月の"りんな"発表会から

2016年5月24~25日開催の日本マイクロソフト「de:code 2016」では、「りんなを徹底解剖。"Rinna Conversation Services" を支える自然言語処理アルゴリズム」というセッションが行われた。開始30分前の入場開始から即時満席。立ち見の聴講者や、入場規制までされた盛況ぶりは、女子高生AI「りんな」の人気をそのまま映しだしているようだ。

日本マイクロソフト デベロッパーエバンジェリズム統括本部 オーディエンステクニカルエバンジェリズム部 部長 エバンジェリストの砂金信一郎氏は、「会話型AIが次世代アプリケーションにおけるUIの中心になる。Microsoft/日本マイクロソフトはこの分野に注力し、開発者やユーザーにサービスを提供したい」と語る。Microsoft CEOのSatya Nadella氏や、Microsoft CVP & Chief Evangelist Steve Guggenheimer氏が基調講演で述べた「Conversation as a Platform」を端的に説明した。

その「Conversation as a Platform」、会話のプラットフォームという包括的な存在。含まれるのは、Bot Frameworkを用いてユーザーとの対話を自動化し、Skypeを支えるOffice 365の世界観や、Skypeをアプリケーションから呼び出すSDK、Slackと連携するコネクターなどだ。

左からマイクロソフトデベロップメントのWu Xianchao氏、マイクロソフトデベロップメントの坪井一菜氏、日本マイクロソフトの砂金信一郎氏

「Conversation as a Platform」の概要。"りんな"もプラットフォームの一部を担っている

さて、女子高生AI「りんな」は、Emotional(感情的な)AIでユーザーとの会話を成立させている。既に"お友達"は340万人以上と、多種多様な会話が実現している。マイクロソフトデベロップメントの坪井一菜氏によると、「『どうやったら面白くなるか』をコンセプトに"りんな"の機能を開発・実装している」とのこと。その背景には、自然言語処理や機械学習、深層学習といった、多数の技術が用いられている。

"りんな"は、Microsoftでも数少ない日本国内で開発しているプロダクトだ。開発チームは、Bing検索エンジンチームとオーバーラップしているため、"りんな"には検索分野に関する多くの技術を組み合わせ、自然言語の学習に応用しているという。具体的には、検索クエリの関連性をランキングする「Learning to Rank」、単語をベクトル化して数学的に表現する定量化手法「Word to Vector」、単語の出現頻度と逆文書頻度を重み付けする「TFIDF」(Term Frequency Inverse Document Frequency)、脳のニューロンをシミュレーションした数学的モデル「Neural Network」といった技術だ。

さらに詳しくはマイクロソフトデベロップメントのWu Xianchao氏が解説したが、専門的なので割愛する(ご興味をお持ちの方は下図のスライドを参考にしてほしい)。結果だけ紹介すると、"りんな"は「愛している」「愛していた」の違いを理解するために深層学習技術を使用し、「愛している」と返答するために単語を組み合わせて表現している。このロジックは、"りんな"の俳句作成機能にも用いられているそうだ。