ソニーは5月18日、米国子会社であるソニー・コーポレーション・オブ・アメリカを通じ、人工知能(AI)に特化したスタートアップである米国Cogitaiに資本参加し、ディープ・リインフォースメント・ラーニング(深層強化学習)技術に予測・検知技術を応用し、新たな人工知能技術を共同で開発すると発表した。

Cogitaiは、強化学習の先駆者であるマーク・リング氏、テキサス大学オースティン校で強化学習を含む人工知能や複数エージェントシステム、ロボット研究を推進する教授ピーター・ストーン氏、ミシガン大学教授で深層強化学習の先導者であるサティンダー・シン・バベイジャ氏により、2015年9月に設立され、実世界とインタラクションをしながら継続的に学習をしていく人工知能の開発を目指している。

同社が開発している人工知能は、センサーから得られたデータとそれに基づき起こしたアクションによる経験から学習し、継続的に知識と能力を向上させて賢くなっていくもので。

両社は、AI開発における次の領域は、自らが経験から自律的かつ継続的に学び、より広範の領域に適応可能な人工知能の開発と考えており、この新たな人工知能により、機械は実世界での経験から自律的に知識やスキルを学習し、さらにそれらの知識・技能・理解を他の機械とも分かち合い、発展させることができるようになるとしている。

ソニーは1999年に完全自律型ロボットであるエンターテインメントロボット「アイボ」を開発するなど、人工知能の研究開発において歴史を持っているが、人工知能に関する活動は、2006年にソニー本社R&Dグループに移管され、深層学習や強化学習を含めた人工知能技術の研究を継続してきた。

R&Dプラットフォームシステム研究開発本部が開発した人工知能技術に基づく製品やサービスには、スマートフォン「Xperia」シリーズに搭載されている統合型拡張現実感技術(SmartAR)を用いたカメラアプリ「AR エフェクト」や行動認識技術を採用したLifelogアプリ、「プレイステーション 4」の顔認識ログインなどがある。

今年3月には、フューチャー・ラボ・プログラムにおいて、耳をふさぐことなくハンズフリーで音楽や音声による情報をインタラクティブに楽しめるネックバンド型ウェアラブルデバイス「コンセプトプロトタイプN」を初公開した。Nはオーディオ信号処理技術と音声認識技術を利用している。

これらの活動と並び、ソニーコンピュータサイエンス研究所(ソニーCSL)は計算幾何学やノイズあるデータ群からの因果推論、言語進化と認識などの基礎理論から、人工知能の応用としてのインタラクティブな音楽創造や製造工程改善、またその他多数の領域で広範囲にわたる人工知能の研究を行っている。