ベネッセホールディングスは、代表取締役の異動および新役員人事について発表を行った。それによると、6月25日付で福原賢一 代表取締役副社長 兼CAO(最高管理責任者)が代表取締役社長に就任。現・代表取締役会長兼社長 兼 ベネッセコーポレーション 代表取締役社長 原田泳幸氏は退任する。

6月に退任が決まった原田泳幸 会長兼社長

原田氏といえば、米アップルコンピュータの副社長および日本法人の代表取締役社長を務めたのち、日本マクドナルドの代表取締役副会長兼社長兼CEOに転身(2005年に代表取締役会長兼社長兼CEOに就任)。アップルのパーソナルコンピュータ「マッキントッシュ」(Mac)からマクドナルドへ移ったことから「マックからマックへ」という表現で騒がれ、日本の“プロ経営者”としてもっとも有名な人物の一人となった。配偶者が著名なシンガー・ソング・ライターであることでも知られている。

就任後の事件で初手からピンチに

その原田氏がベネッセホールディングスの会長兼社長に迎え入れられたのは2014年6月のこと。つまり、わずか2年での退任劇となる。その最大の理由が業績の悪化だ。平成28年3月期の売上高は約4,440億円、連結最終損益は約82億円の赤字と苦戦。前期も売上高約4,630億円、損益は約107億円の赤字だった。

正直、原田氏は不運だったといわざるをえない。ベネッセの会長兼社長に就任して1カ月も経たずに約2,070万件もの個人情報流出が発覚。この事件を嫌忌して同社の通信教育講座「進研ゼミ」「こどもちゃれんじ」を解約する動きが加速したことに加え、自粛のため大々的なプロモーションが行えず新規会員の獲得がはかどらなかった。同社にとって国内教育事業は売上高の半分を占める大黒柱。その主事業の会員減少が、同社の経営を直撃し業績悪化につながった格好だ。

もちろん、これだけが業績悪化の要因ではない。少子化が進み、国内教育事業の対象となる層が減少していること。加えてスマホやタブレットを使ったオンライン学習プログラムを前面に打ち出した企業が教育事業に参入し、競争が激化したこともベネッセに追い打ちをかけた。

同社が主軸とする進研ゼミは、生徒が記入したテキスト用紙を先生が添削する“赤ペン先生”と呼ばれる仕組みがメイン。2015年2月に「BenePa」(ベネパ)を発表しオンライン教材の取り組みを始めたが、ライバル企業に比べ遅きに失した感は否めない。また、専用タブレットを活用する「チャレンジタッチ」という学習方法もあるが、これだけスマホやタブレットが普及した時代に専用端末のみのサービスというのは、正直違和感を覚える。

だが、2016年4月からスタートした「進研ゼミプラス」では、そうした弱点を補っている。