サイレックス・テクノロジー(サイレックス)は5月9日、都内で事業方針説明会を開催し、代表取締役社長の河野剛士氏が同社の現況と今後の注力分野について語った。

サイレックス・テクノロジー 代表取締役社長の河野剛士氏

同社は2010年よりプリントサーバーをメインとする事業からの転換を図るために無線ソリューションに注力してきた。その結果、2009年には売上の18%に過ぎなかった無線関連ビジネスは、安全かつ確実に機器をワイヤレス対応させる技術力をベースに2015年には75%を占めるまでに成長。それと同調するように2009年のリーマン・ショックで半減した売上も2008年頃に近い水準まで回復させることに成功した。河野氏は「これをもって、会社の事業転換を完結し、次はこれを踏み台にして成長していきたい」とする。

無線関連ビジネス売上の推移。2009、2012、2015は3カ年計画の最終年度。同社は2016年度より新しい3カ年計画に入る。(提供:サイレックス・テクノロジー)

無線関連ビジネスの成長を牽引したのは同社が従来より強みを発揮してきたドキュメント関連市場と欧米で無線モジュールの導入が進む医療機器・ヘルスケア市場。河野氏によれば、医療機メーカーは上位10社のうち7社にサイレックスの製品が採用されているという。

また、大型ディスプレイとタブレットをつなぐ画像転送機能付きアクセスポイントの導入が教育分野で進んでいるほか、監視カメラやPOSなどのネットワーク機器市場も成長に貢献した。

無線ビジネスを牽引した製品および市場 (提供:サイレックス・テクノロジー)

事業転換と業績回復を果たした今、サイレックスが次の注力分野として位置づけているのがIoTを背景とした成長が見込まれているFA市場だ。同市場での売上は現在10%に満たないが、2016年度からの3年間でこれを20%まで伸ばすことを目指す。同社は2011年に村田機械の100%子会社となっているため、これは当然のターゲット設定といえるだろう。

村田機械グループへの子会社となったことで村田機械の通信ソリューション事業がサイレックスに統合されたほか、2015年にはQualcomm Authorized Design Centerに認定されているインドのembWiSe Technologiesを買収するなど開発リソースの強化も着々と進められてきた。

さらにKiiコンソーシアムへの参加、ルネサスエレクトロニクスとの協業、DFSチャネル利用技術を有するIgnition Design Labsから技術供与を受けるなど、国内外の企業とも積極的に連携しているほか、無線製品の生産能力も大幅に強化。河野社長は「IoTが今後勢いを増し、成熟化すれば我々の大きなチャンスとなる」とし、IoTならびにFA市場での飛躍に向けて自信を見せている。