5階「世界をさぐる」への入り口「セカイゲート」

5階「100億人のサバイバル」

さまざまなハザードから身を守るために理解すべきことを認識

5階「世界をさぐる」で紹介されたのは、「生き延びるためにはどうすればいいのか」をテーマに自然災害やその元となっている現象など、命や社会の存続を脅かす「ハザード(危険)」がどのようにして生まれ、被害を引き起こすかについて考える「100億人でサバイバル」なる新展示だ。

ゾーン1「100億人の命」では、穴を覗き込むと実際に起こった被害映像や音声などが流れる

ゾーン2「あなたの命がおかれている状況」では、ハザードを「赤い玉」で表現したモデルで自分の身の守り方を考察できる

ここでは、1~3のゾーンに分かれ、ゾーン1の「100億人の命」では、壁の穴を覗き込むと、地震や噴火、気象現象、原発事故、感染症、サイバー攻撃、テロなど、実際に起こった「ハザード」の被害映像や音声などが流れており、我々の身近にも命に関わる危険がある事実を目と耳で再認識させてくれる。また、ゾーン2の「あなたの命がおかれている状況」では、地球や人間社会におけるさまざまなハザード(災害を起こす要素)を「赤い玉」で表現し、地球の仕組みと人間社会を再現したモデルの連鎖を眺めることで、ハザードから身を守るために理解しておくことを認識できる。

「あなたの命を守るには」と題されたゾーン3では、ハザードがたどる道筋を、「危険の種に気づく」、「正体を突きとめる」、「災害に備える」、「被害を抑える」、「経験を生かす」といった5段階に分類し、被害を減らすための社会の取り組みについて、同館館長の毛利衛氏からのメッセージとともに紹介されている。

ゾーン3「あなたの命を守るには」では、ハザードによる被害を減らすためのさまざまな社会の取り組みが紹介されている

このほかフロンティア研究についての現在の取り組みを紹介する展示コーナー「フロンティアラボ」では、巨大な望遠鏡「すばる望遠鏡」や地球深部探査船「ちきゅう」の模型、H-IIAロケットのメインエンジン(実物)、さらには深海生物「ユノハナガニ」など、従来からの展示物が中心となっている。

さらに、同じく5階に新設された「コ・スタジオ」は、"来館者と共に考えて行動する"というコンセプトのもとに設置された、最新の科学について科学コミュニケーターやボランティアとともに語り、考えることのできるスペース。ミニトークやワークショップなどのほか、研究者から直接話を聞いたり質問したりできるトークイベントも開催されるということだ。

「コ・スタジオ」では、ミニトークやワークショップ、トークイベントなどが開催されるという

また、7階のドームシアターでは、素粒子のミクロ世界と宇宙のマクロ世界という矛盾するふたつの理論を統一する「万物の理論」をテーマにした3Dドーム映像作品「9次元からきた男」が新たに上映される。難解な理論物理学の最前線を、エンターテイメント性あふれる実写と精緻なCG・データビジュアライゼーションを融合させた映像で体験できる同作品の演出は、「呪怨」や「魔女の宅急便」などで知られる映画監督の清水崇氏が手がけているとのことだ。

アプリ「Miraikan ノート」やミライゲート/セカイゲート、「ノーベル Q」のクリエイティブディレクションを手がけた伊藤直樹氏(PARTY)

「Q」の文字の右下にある「、」部分が状況に応じて変化

ここからは、「Miraikan ノート」アプリや「ミライゲート/セカイゲート」、「ノーベル Q」のクリエイティブディレクションを手がけた「PARTY」の伊藤直樹氏に、キービジュアルとして「Q」を採用した理由について話を伺った。

伊藤氏は「科学は"問い"をたてて実験をしたり発明したりするもの」だと前置きした上で、アプリに関して「未来館のすべての展示は"問い"を投げかけており、毛利氏が重要視している"考えて行動に移すまで"をもシステム化すべく、同アプリを制作した」と述べた。

同アプリでは、問いを見つける画面では大きな「Q」の文字の中にいくつかの問いが表示されるが、「Q」の右下の「、」の部分が、考えを深める画面では考え中の状態を表す「吹き出し」のようになったり、行動につなげる画面ではToDoのチェックボックスのように「レ点」になったりと、状態に応じて直感的にわかりやすいデザインになっているという。

加えて、「スマホを手に持って画面に右手の指を置いて考えている姿が「Q」の文字に見えた」ことを明かした。同アプリは、未来館が打ち出している「問い、考え、行動する」のコンセプトに基づいて作られているが、館内のみならず、自宅や学校、職場といった日常生活においても、問い、考え、行動に移すといった一連の作業を管理できる「子どもから大人まで使えるノートアプリ」として活用できるということだ。そして未来館の館内では、前述したようにモデルコースを巡ったり、音声ガイドを聞いたりすることも可能となっている。

日本科学未来館の外観

なお、日本科学未来館の開館時間は、10:00~17:00(入館券の購入は閉館30分前まで)。入場料は、大人620円/18歳以下210円。ドームシアター鑑賞料は、大人300円/18歳以下100円(入館券とのセット購入のみ)。