半導体市場専門調査企業である米IC Insightsは4月14日(米国時間)、300mmウェハ対応の半導体工場が2016年に100を超えて今後もさらに増加していく見込みであると発表した。また450mmウェハを用いた量産の開始は2020年代前半との見解も併せて発表した。

300mm工場は、2006年にその数が50を超え、2008年には半導体製造に使われるウェハ表面積で200mmウェハを超えた。ちなみに、IC Insightsの定義によると、300mmウェハ対応の半導体工場と言うのは量産工場はもちろん、試作工場も含むが、研究開発用の300mm研究施設は含まない。さらに、ソニーのように、300mmウェハを使って、IC以外の製品(ソニーの場合はイメージセンサ)を量産している工場もカウントしていない。IC Insightsの統計では、光学デバイス、センサ、ディスクリート(O-S-D)製品は、集積されているか否かを問わす非IC製品としてIC製品とは区別している。

300mmウェハ工場に関するトピックスは以下のとおり。

  • 2013年に稼働開始が計画されていた複数の300mm工場は2014年に延期され、その上、台湾ProMOSの2つの大きな半導体工場が2013年に閉鎖されたため、同年、初めて300mm工場数が前年から減少した
  • 2015年末時点で、95の300mm工場が稼働している
  • 2016年初頭時点で8つの300mm工場が2017年の稼働を目指して建設中。2014年に9工場が稼働したが、2017年はそれにつぐ建設ラッシュになる
  • 2020年末までに、さらに22の300mm工場の稼働が計画されている。これにより、総計117のIC工場が稼働することになる。2020年代に入り450mmウェハを用いた生産が始まるようになれば、300mm工場の数は125程度でピークを迎えるだろう。ちなみに、200mm工場は最大で210を記録したが、すでにピークを越えて、2015年末の時点では148に減っている
  • 現在の300mm工場は巨大だが、数期わたる拡張工事の結果、複数のモジュールに分かれており、1モジュールあたり、月産2万5000~4万5000枚のウェハ処理能力を有する。それぞれのモジュールは隣接して連携している。とくにTSMCではこのモジュール化を徹底しており、同社のFab12、Fab14、Fab15では拡張工事ごとに製造モジュールを追加してきた

図 世界中で稼働中の300mmファブの数の変遷と今後の予測。縦軸は稼働中のファブ数、横軸は西暦年。試作および量産ラインは含むが、研究ラインや付帯設備棟などは含まない。TSMCのFab14には6期に渡る拡張でそれぞれの建物があるがこれらは別々にカウントされている (出典:IC Insights)

450mm時代は2020年代前半に必ず到来

450mmウェハ技術の開発は、ゆっくりしたペースではあるが着実に進んでいる。450mmへの移行にとって、リソグラフィは最大の難関であるので、オランダのASMLが、2014年3月に 450mmウェハ用露光装置(EUV装置のみならず、ドライArF/液浸ArF装置も)の開発を一時中止すると発表した時には、「これは450mmへの移行が永久にありえないという合図かもしれない」と思った業界人も多かったようだ。ASMLは、450mm用露光装置の開発を期間の定めなく延期することを決定したのは、「複数の顧客がそうするように要求したからだ」と公言している。複数の顧客とは、Intel、TSMC、Samsungのすべてあるいは一部であろう。

IC InsightsはASMLのこのような発表や、さまざまな分野から聞こえてくる、「450mm技術の開発を中断する」との情報を、450mmへの移行が将来にわたり起きないというサインとは信じていない。これらは、おそらくは2019年までは450mm試作が行えるような状態にならないという意味にとらえている。450mmの量産開始ははそれからおそらく2、3年後に始まるのではないかとみている。