ハイテク市場調査企業である米IHSは4月13日(米国時間)、2015年の中小型ディスプレイ(おもに、スマートフォン、携帯電話、モバイルPCなどに使われるディスプレイ)市場の最終確定値を公表した。それによると、中小型ディスプレイ市場は、数量ベースでは28億台と、昨年から変化はなかったが、金額ベースでは、前年比4%成長し、439億ドルに達した。

韓国Samsung Displayは、9インチおよびそれ以下のサイズのディスプレイ・マーケットをリードして市場占有率23%を確保し、引き続きトップの地位を確保した。これをジャパンディスプレイ(JDI)(16%)、韓国LG Display(13%)、シャープ(10%)が追う。これらが中小型ディスプレイの世界4強で、5位以下の台湾・中国メーカーのシェアは5%以下である。中国BOE,台湾CPTとともにシェア5%で5位グループを形成するInnolux(群創光電)は、シャープを買収した台湾の鴻海精密工業の子会社であり、シャープと一緒になってトップグループに躍り出る作戦を練る。

数量ベースで伸びがなかった中小型ディスプレイの中で、2ケタ成長した分野があった。高精細度スマートフォンディスプレイの要求の高まりでActive Matrix Organic Light Emitting Diode(AMOLED、いわゆる有機EL))は前年比54%伸びた。低温ポリシリコン(LTPS)TFT-LCDは10%伸びた。SamsungはAMOLEDを得意とし, 中小型AMOLEDでは世界市場をほぼ独占した。一方、JDIはLTPSを得意とし、中国市場で売り上げを伸ばした。中小型ディスプレイ市場でAMOLEDとLTPS TFTが伸びた一方で、アモルファス・シリコン(a-Si)TFT-LCDは10%減少した。

「ますます成熟する中小型ディスプレイ市場で競争力をつけるため、スマートフォンメーカーは。a-Si TFT技術から抜け出してAMOLEDやLTPS TFTによる高性能ディスプレイシフトしている」とIHSの中小型ディスプレイ担当シニアディレクターである早瀬宏氏は指摘する。「実際、AppleのiPhoneは近い将来AMOLEDを採用するといわれており。JDIとジャープは、2018年までにAMOLED量産に向けて投資すると公式に発表しており、先行するAMOLEDサプライヤのSamsung DisplayとLG Displayに挑戦する」(早瀬氏)。

なお鴻海精密工業は、シャープのAMOLED量産にむけて2000億円を出資することを決めており、万一、シャープ買収が最終段階で決裂しても、シャープの液晶ビジネスは鴻海のものになる契約になっている。今後、鴻海シャープ連合が、勢いに乗ってどこまで成長するか注目される。

図 2015年の世界中小型ディスプレイ市場の企業別シェア(金額ベース) (出所:IHS)