東京大学と麻布大学は4月15日、オスマウスの涙に含まれる「ESP1」というフェロモンが、異性だけでなく同性の他個体や分泌している自分自身にも作用することを発見したと発表した。

同成果は東京大学大学院農学生命科学研究科の東原和成 教授、麻布大学獣医学部動物応用科学科の菊水健史 教授らによるもの。米科学誌「Current Biology」に掲載された。

尿、涙、唾液などの外分泌液に含まれるフェロモンは、受け取った固体の嗅覚系を介して脳に情報が伝達され、社会行動や性行動など、哺乳類にとって重要な行動を引き起している。

ESP1はメスの性行動を促進させる性フェロモンとしての機能が知られており、メスマウスが受容すると、背中をそらしてオスマウスの交尾を受け入れやすくする体勢をとることがわかっている。

今回の研究ではESP1がほかのオスに対してどのような効果があるのか、また分泌しているオス自身の身体でどのような変化が起きるのかを調査。その結果、ESP1が、尿の存在下、オスに攻撃を促す効果があることを発見したほか、性成熟とともに分泌が増加するESP1が自分自身にも作用することによって、自身が持つ攻撃性がさらに高まることがわかった。

一般的に性フェロモンは異性に対しての作用が知られているが、分泌している自分自身にも効果があるという今回の結果について研究グループは「フェロモンの新しい概念を提供する発見」だとしている。

性フェロモンESP1は、異性の性行動を促進させるだけでなく、同性の他個体に対する攻撃を誘発し、さらには分泌する自分自身の攻撃性を高める。