Mentor Graphicsは4月4日(米国時間)、高速デジタルプリント基板(PCB)設計における各種解析/検証ツール「HyperLynx」の最新バージョンをリリースした。

「プリント基板の設計も、その複雑度が増すごとに、用いるツールについても増加し、ツール間連携に伴うセットアップ時間の増加やシミュレーションの複雑さが増すなど、処理以外の時間も増えることとなる。また、増加したツール群をつかいこなす必要もある一方で、人的リソースには限りがあり、人員不足による開発ボトルネックという課題もある」と同社Product Line Director, HyperLynxのDavid Kohlmeier氏は、現在のプリント基板設計の課題を語り、今回のバージョンアップがそうした課題の解決策につながるとした。

プリント基板設計の課題とHyperLynxの新バージョンの概要

HyperLynxは、設計者の少しでも早く解析結果を知りたい、というニーズを実現することを目指して開発が進められてきたもので、今回のバージョンアップにより、シグナルインテグリティ(SI)とパワーインテグリティ(PI)の解析のほか、3D電磁界(EM)ソルバ、高速ルールチェック機能を単一環境に統合。これにより、例えばSerDesチャネルのシミュレーションを実行した後、メニューを1つ選択するだけで、大規模な電源ネットのディカップリング解析に切り替える、といったことが可能となった。

最新バージョンではシグナルインテグリティ(SI)、パワーインテグリティ(PI)、3D電磁界(EM)ソルバ、高速ルールチェック機能が単一環境に統合され、1つのHyperLynxのGUIだけを用いて作業することが可能となり、かつ従来のHyperLynx SI、HyperLynx PI、HyperLynx DRC、HyperLynx 3D EMの4つのツールがバックエンドで動くことで、細かなパラメータを気にしないで解析を実行することができるようになった

また、3Dフルウェーブを含む高度な電磁場ソルバを備えており、将来、より高速化するSerDes技術にも対応していくことが可能となったほか、3Dエンジンが緊密に統合されているため、ユーザーはフルウェーブソルバ環境の複雑な細部について学ぶ必要がなく、シグナル構造とパワー構造のジオメトリが合格基準に達していること、電磁界ポートが作成されていること、シミュレーションが実行されたこと、Sパラメータ解析の結果がタイムドメインのシミュレーションに取り込まれたことなど、すべてを自動的にチェックすることも可能となった。

ハイスピードのノイズとシグナルの品質を数値化していこうという解析手法である「COM(Channel Operating Margin)解析」を自動化しているので、設計者はCOMに関する詳しいことを行わずに、ツール側で判別して提示してくれる

さらに、データを先に計算して、一時保存するといった手法を用いることで、複数の解析・検証エンジンを同時に使用しても処理性能が落ちない工夫を採用。問題を個々別々に切り分け、それぞれに最適なエンジンを自動的に割り当てることも同時に行うことで、基板のどこ場所のシミュレーションを実行すればよいのか、といったことも自動判断できるようになり、高速化と自動化の両立も可能とした。

検証の高速化として、問題を切り分けて演算を行うことで、イレギュラー部分のみ3次元解析を行うなど、個別に最適なエンジンを割り当てることが可能となり、自動化と高速化を両立させることに成功したとする

同社Business Development ManagerのDavid Wiens氏は、「製品開発の目標は、顧客に向けて、いち早く高い精度を提供するということ」とし、1つひとつのモデリングを設計者は決して見ていたくはないことを強調。細かいパラメータを気にしないで解析を実行できるようになったことで、設計者のリソースをより付加価値の高いところに持っていけるようになるとした。

左がProduct Line Director, HyperLynxのDavid Kohlmeier氏、右がBusiness Development ManagerのDavid Wiens氏