米国の宇宙開発企業「ブルー・オリジン」は4月2日(現地時間)、これまでに2回飛行している「ニュー・シェパード」ロケットを三度打ち上げ、着陸させることに成功した。また、ロケットの先端に搭載された無人カプセルも着陸に成功。中に積まれた微小重力実験装置による実験も行われた。

打ち上げは日本時間4月3日0時18分ごろ、西テキサスにある同社の試験施設で実施された。ロケットは順調に上昇し、高度103kmに到達。先端に搭載した無人のクルー・カプセルを分離した。

ロケットはその後降下し、高度約1kmでロケットエンジンに再点火して減速し、地面に着陸した。一方のカプセルもパラシュートを開きつつ降下し、着陸に成功した。

垂直離着陸式で、高度100kmの宇宙空間まで飛行した機体を再使用できるロケットは、現在のところニュー・シェパードしかなく、ロケットの「再々使用」による3回目の飛行は世界初のこととなった。

ニュー・シェパード2号機の3回目の飛行 (C) Blue Origin

ニュー・シェパードとクルー・カプセル

ブルー・オリジンは2000年9月に、ネット通販大手のAmazon.comを設立したことで知られるジェフ・ベゾス氏によって立ち上げられた。同社は、旅客機のように何度も飛行ができる再使用ロケットの研究開発を行っており、試験機の打ち上げを続けている。

ニュー・シェパードは単段式のロケットで、垂直に打ち上げ、高度100kmの宇宙空間まで上昇した後、そのまま垂直に着陸し、整備と推進剤の補給を行い再び打ち上げることができる能力をもつ。ロケットエンジンには液体酸素と液体水素を使う「BE-3」を使う。

ニュー・シェパードの初飛行は2015年4月に行われ、高度93kmまで到達したものの、ロケットの着陸に失敗。しかし、同年11月23日に行われた2号機による飛行では、高度100.5kmまで到達した後、地上に帰還することに成功した。そして今年1月には、その打ち上げに使ったものと同じ機体(2号機)を再び打ち上げ、宇宙空間まで達した後、垂直に着陸することに成功。さらに今回、その機体を三度飛行させることに成功した。

この3回で使われた機体は基本的には同一だが、着陸の成功率を上げるための改良などが加えられている。

同社のロケット打ち上げは毎回、一般には秘密裏に行われることで知られているが、今回は初めて、ジェフ・ベゾス氏自らTwitterで飛行の様子を実況した。

ニュー・シェパード2号機の3回目の打ち上げ (C) Blue Origin

高度100kmから降下し、地上から約1kmでエンジンに再点火したニュー・シェパード (C) Blue Origin

ニュー・シェパードは人工衛星を打ち上げることはできないが、ロケットの先端に最大6人の乗客や実験装置などを積んだカプセルを搭載することができ、約4分間の宇宙観光や、微小重力環境を利用した実験などを行うことができるようになっている。ただ、これまでの打ち上げで人が搭乗したことはない。

今回の打ち上げでは、クルー・カプセルには、サウスウェスト研究所とセントラル・フロリダ大学が開発した実験装置が搭載され、微小重力環境を利用した実験が行われた。

ブルー・オリジンでは、今後もニュー・シェパードの試験飛行を繰り返し、2年以内にも同ロケットを使った宇宙観光や宇宙実験をビジネスとして展開したいとしている。先月には、同社の工場で複数のニュー・シェパードの建造が進んでいることが明らかにされている。

また、人工衛星を打ち上げられる大型の再使用ロケットの開発も進められており、こちらは2019年ごろの初打ち上げを目指すという。

ロケットの再使用をめぐっては、ブルー・オリジンと同じ米国の宇宙企業であるスペースXも開発や試験を続けており、両社の間で再使用ロケットの開発競争が激化しつつある。

ニュー・シェパード2号機の3回目の打ち上げ (C) Blue Origin

高度100kmから降下し、地上から約1kmでエンジンに再点火したニュー・シェパード (C) Blue Origin