東京医科歯科大学はこのほど、薬剤を口の中に注射することで顎の骨を造成することに成功したと発表した。

同成果は同大大学院医歯学総合研究科硬組織薬理学分野の青木和広 准教授の研究グループによるもので、3月22日の国際学術誌「Journal of Dental Research」オンライン版に掲載された。

歯が抜けたり、合わない入れ歯を長年つけていたりすると顎の骨は少なくなり、安定したかみ合わせが得られなくなってしまう。顎の骨が少ないと、人工歯根も植えることができない。また、口蓋裂など生まれつき骨が足りない小児には骨の移植が必要となるが、現状では手術をせずに骨造成を促進する方法は存在していない。

局所の骨を造成する薬として骨形成因子BMP-2が知られているが、この因子単独で骨が十分作られる用量を使用すると、ヒト口腔内では歯肉が腫脹するなどの副作用を引き起こすことが指摘されている。

同研究グループはこれまでに破骨細胞分化因子RANKLの作用を阻害するペプチドOP3-4が骨形成を促進する作用を持つことを明らかにしている。今回の研究では薬剤を注射した局所に留めておくために使用されるゼラチンハイドロゲルを用いて、BMP-2とペプチドOP3-4を組み合わせた薬剤をマウスの上顎に注射した。4週間後、注射した部位に明らかな骨造成が認められた。副作用を考慮し使用量を抑えたBMP-2のみでは充分な顎の骨は造成されなかったが、少量のBMO-2にペプチドOP3-4を併用すると骨の量が倍以上に増えたという。

今回の研究について同研究グループは「現状では手術以外の方法では骨を増やすことが出来ない歯科臨床において、患者にやさしく骨を増やすことができる技術の開発に向けて大きく前進した大変意義深い成果と言える」としている。

薬剤注射4週間後、マウスの上顎で骨造成が認められた。