セイコーエプソンは、長期ビジョン「Epson 25」および中期経営計画「Epson 25 第1期中期経営計画」を発表。2025年度に、売上高1兆7000億円、事業利益2000億円、ROS(売上収益事業利益率)12%、ROE(親会社所有者帰属持分当期利益率)15%を目指す。また、「Epson 25」を3期に分けて長期経営計画を実行。第1期では、最終年度となる2018年度の売上高を1兆2000億円(2015年度見通し1兆1000億円)、事業利益960億円(同820億円)、ROSは8%(同7.5%)、ROEでは継続的に10%以上(同11.8%)を目指す。

セイコーエプソンが示す今後の成長の方向性

また、2018年度のセグメント別売上高は、プリンティングソリューションズが8050億円(同7420億円)、ビジュアルコミュニケーションが2000億円(同1800億円)、ウエアラブル・産業プロダクツが1950億円(同1760億円)とした。

セイコーエプソン 代表取締役社長の碓井稔氏

セイコーエプソンの碓井稔社長は、「ここで掲げた計画はやりきる、またやりきる自信がある」と強く宣言。「Epson 25では、エプソンの強みである省・小・精の技術に基づいて生み出す『スマート』、『環境』、『パフォーマンス』が、提供できる価値となる。これにより、エプソンブランドの価値を徹底的にあげていく」とした。

さらに、「なかでも、インクジェット技術にフォーカスし、ホーム市場での競争優位性を確立するとともに、高速ラインヘッド技術を極める。これにより、レーザープリンタを凌駕する品質、耐久性、メンテナンス性、低プリントコストを実現した小型、高精細機種をオフィス市場に投入する。インクジェットプリンタによって、レーザープリンタを置き換えるだけでなく、ラインインクジェットプリンタによって複写機も置き換えていく。これにより、オフィス市場開拓を軌道に乗せるととともに、オフィス製紙機のペーパーラボを組み合わせた循環型の印刷型環境を実現することで、新たなオフィス環境を実現していきたい」と語った。

いわば、エプソンが複合機市場への本格参入を宣言したともいえ、同社独自のマイクロピエゾ方式のインクジェット技術によって、複合機対抗製品を新たに投入していく姿勢を示した。

オフィス向けインクジェットプリンタについては、「キヤノンやブラザーといった競合に対しても、性能面、コスト競争力、製品の魅力でも勝ったものを実現する。また、これまでも負けてきた認識はない。自らのモノづくり力によって、他社を凌駕できる」と発言。また、複合機対抗製品については、「技術的には最後の追い込みに入っている。エプソンは、複合機の販売ルートを持っているわけではないが、販売パートナーから、エプソンとつきあわないと、将来自分たちのビジネスが成り立たないと感じ取ってもらえる製品を提供することが、最大の販売戦略になるだろう。その製品をEpson 25 第1期中期経営計画中のなるべく早い時期に投入したい。それによって、販売組織のあり方を変えていくこともできる。中途半端なモノづくりの会社になるつもりはない」などと述べた。

同社では プリンティング領域における取り組みを「インクジェットイノベーション」と位置づける一方で、独創のマイクロディスプレイ技術とプロジェクション技術により、ビジネスと生活のあらゆる場面で感動の映像体験と快適なビジュアルコミュニケーションを実現するために、サイネージ、スマートアイウェア、ライティング領域へと展開する「ビジュアルイノベーション」、ウォッチのDNAを基盤に、正確な時間とセンシングに磨きをかけて個性あふれる製品群を作りだし、着ける喜び、使う喜びを提供する「ウエアラブルイノベーション」、センシングとスマートを融合させたコア技術を製造領域で磨き上げ、製造現場だけでなくサービス分野でも利用でき、人と安全に共存するための「ロボティクスイノベーション」を、4つのイノベーション領域とし、これらを支えるマイクロデバイス領域において、独自のセンシングソリューション、タイミングソリューション、省電力ソリューションを生かすことで、エプソンの完成品の価値創造に貢献する姿を描いてみせた。

4つのイノベーション領域と、それを支えるマイクロデバイス領域

さらに、長期ビジョン「Epson 25」で掲げたビジョンステートメントでは、接続性やユーザビリティを高めることで、社会の効率化やサービスの煩わしさの解消を行う「スマート」、製品、サービスのライフサイクルに渡る環境負荷低減を価値として提供し、持続的な発展をもたらす「環境」、高いパフォーマンスの生産性、正確さ、創造性を提供することで、より高い新たな価値を創造する「パフォーマンス」を、省・小・精によって提供可能なエプソンの価値と位置づける一方、人とモノと情報がつながるなかで、それらを実現する製品を提供しながら、「リアルの世界で実体のある究極のモノづくり企業」を目指す姿勢を強調。「先鋭化した製品を求心力とし、サイバー空間を得意とするIT企業のリソースを活用する」とした。加えて、人々を単純作業や時間、エネルギーの浪費から解放し、クリエイティブな知の生産性を高め、健康で安心な生活を楽しむことができる社会を目指す姿勢も示してみせた。

具体的な製品として、産業分野ではプロフェッショナルプリンティングや高光束プロジェクタ、ロボットなどを中心に展開。オフィス分野ではインクジェットプリンタやペーパーラボを事業成長させる計画。また、コンシューマ分野ではインクジェットプリンタやプロジェクタに加えて、ウエアラブル機器、スマートアイウェアを成長させるとした。プロフェッショナルプリンティング分野では、協業やM&Aを積極化させる考えも明らかにした。

一方で、セイコーエプソンは、これまで2015年度を最終年度とした長期ビジョン「SE15」に取り組んできたが、これについても総括。碓井社長は、「エプソンの強みにフォーカスし、事業構造改革を完遂。顧客視点のビジネスモデルの転換、新規領域の開拓を進め、ポートフォリオの再構築に取り組んできた。だが、最大の成果は、安定かつ継続的なキャッシュ創出力を構築できた点にあり、3年間累計の営業キャッシュフローは3246億円、フリーキャッシュフローは1946億円となった。一方で、転換と開拓をやりきれなかった事業、領域もあった。これらは新たな中期経営計画のなかで形にしていく」とした。

碓井社長は、「2018年度までのEpson 25 第1期中期経営計画では、SE15で残した課題をやりきる一方で、Epson 25の実現に向けた製品の仕込みを行い、成長基盤を創り上げることになる。短期的な利益成長を勘案しつつも、必要な経営資源はタイムリーかつ着実に投下する」と位置づけ、また、「エプソンは、よりよい社会の実現に中心的な役割を果たし、なくてはならない会社でありたいという高い志のもと、新しい価値の創造に挑戦していく。自らの常識を超えて挑戦し、イノベシーションを生むことで、継続的な価値を創造するのが、我々が目指す姿であり、これが長期ビジョンのベースにある」などと語った。

Epson 25とSE15の位置づけと2018年度、2025年度の業績目標の詳細