4月に新社会人となる人は、これからの長い人生、いかにお金と上手に付き合っていくかで、生活だけではなく心の豊かさが変わってきます。まずは毎月の給料からキチンと貯蓄をすることが大事です。会社員であれば、お得に貯蓄ができる制度があります。ムリなく長く続けていくために、貯蓄制度を理解することから始めてみましょう。

勤務先の貯蓄制度を活用してお金を貯めよう

早いうちから貯蓄グセをつけることが重要

貯蓄は「これで終わり」ということがありません。結婚資金、子供の教育費、住宅購入資金、そして老後資金と大きな出費に備えて貯蓄をするのですが、日々の生活の中で旅行や帰省、家電や車の購入、スキルアップのための学習費など、毎月の給料では賄えない出費があります。また病気やケガなど不慮の事態に備えることも必要です。貯蓄は、生活の安心を支えるものでもあります。

若いうちは、交際費や外食費、理美容代、被服費といった支出が膨らみがちですが、給料を全部使い切ってしまう生活を続けていると、年齢を重ねても消費グセを直すことが難しくなります。若いうちから、収入と支出のバランスを考えて、できる範囲の貯蓄を心がけることが大切です。

貯蓄のセオリーは、「給料から先取りして貯蓄をし、残ったお金で生活する」ということですが、先取りするには、給与天引きの貯蓄を活用するのが一番確実です。勤務先に天引き貯蓄の制度があれば、積極的に利用することです。

財形貯蓄制度は無敵の制度

勤務先に「財形貯蓄制度」があれば、当面の貯蓄は、これ1本で十分です。厚生労働省が所轄の公的な貯蓄制度で、様々な優遇措置が講じられています。

財形貯蓄制度には、「一般財形貯蓄」「財形住宅貯蓄」「財形年金貯蓄」の3つがあります。勤務先によっては、一般財形貯蓄のみ導入しているなど取り扱いが異なりますが、若いうちは、一般財形貯蓄か財形住宅貯蓄を利用するといいでしょう。

最大のメリットは、財形住宅貯蓄と財形年金貯蓄は、その2つの貯蓄残高合計550万円(保険商品の場合は払込保険料総額385万円)までは利子が非課税になる点です。普通預金や定期預金など一般の銀行の貯蓄商品は、利子に20.315%の税金がかかり、その分、受取額が減りますが、財形貯蓄は利子が非課税なので、有利に貯蓄をすることができます。ただし、上限額を超えるとその部分は課税対象となります。また、財形住宅貯蓄の引き出し条件は、住宅の建設・購入・リフォームの資金とすることとなっていますので、目的外の引き出しには、5年間さかのぼって課税されるので、注意が必要です。

特に住宅購入の予定がなければ、非課税特典はありませんが、1年たてば、いつでも自由に、どんな目的にも使える一般財形貯蓄がおすすめです。

さらに、財形貯蓄をしていると(3つのいずれか、どれでも)、貯蓄残高が50万円以上あれば、住宅購入の際に「財形持ち家転貸融資」を受けられます。融資額は貯蓄残高の10倍、最高4,000万円までで、必要な資金の90%まで借りられます。2016年1月1日時点での金利は、5年固定で0.78%。一般の銀行の住宅ローンと比較しても、そん色ない金利です。子育て世帯の場合は、ここからマイナス0.2%の優遇金利が適用され0.58%となるので、住宅購入の際の心強い味方といえるでしょう。

老後資金を今から準備するなら確定拠出年金制度を

貯蓄の最終的な目標は老後資金でしょう。公的年金の不安がぬぐえない今、若い世代は今から自分の老後資金の準備も始めなくてはなりません。老後資金を準備するのに最適なのが「確定拠出年金(DC)」です。これも勤務先で導入していれば、少額でも構わないので、1年でも1カ月でも早くスタートさせることです。DCには、企業型を個人型があり、勤務先に制度がなければ、自分で個人型に加入することになります。その場合は給与天引きではなく、給与振込口座から自動引き落としなどの手続きが必要で、掛け金は全額自己負担となりますが、掛け金は全額所得控除できるので、税金の軽減にもなります。

企業型は、勤務先が従業員のために掛け金を拠出する企業年金です。そのため掛け金は上限が決められているので、その上限内で従業員が運用するマネー商品を用意された中から選択することになります。個人が掛け金を上乗せして拠出できる「マッチング拠出」を導入していれば、さらに老後資金として運用するお金を増やすことも可能です。

企業型、個人型いずれの場合も、DCで運用した商品には、利子・配当・分配金などの運用中の利益が非課税となり、給付時(60歳以降)まで課税されずに複利(再投資)で運用できるのが最大の魅力です。また、受取時も所得控除などの税の優遇措置もあるので、将来の税金負担も軽減できるわけです。

このように、勤務先や公的な制度で貯蓄をすると、税の優遇が受けられたり、融資が受けられたりとオトクなことがいろいろあるのです。せっかく利用できるのであれば、使わないのは実にもったいないことです。新社会人のみならず、まだ利用していない人も、会社の制度を最大限活用して、お金を上手に貯めていきましょう。


伊藤加奈子
マネーエディター&ライター。法政大学卒。1987年リクルート(現リクルートホールディングス)入社。不動産・住宅系雑誌の編集を経て、マネー誌『あるじゃん』副編集長、『あるじゃんMOOK』編集長を歴任。2003年独立後、ライフスタイル誌の創刊、マネー誌の編集アドバイザーとして活動。2013年沖縄移住を機にWEBメディアを中心にマネー記事の執筆活動をメインに行う。2級FP技能士。