NECとNTT、NTTコミュニケーションズ、富士通、日立製作所の5社は3月10日、アプリケーションが必要とする品質や利用状況に応じ、広域ネットワーク上の資源を動的に確保するSDN(Software-Defined Network:ソフトウェア定義型ネットワーク)の基盤技術を確立したと発表した。

同技術は5社共同で広域ネットワークインフラの総合的なSDN化を目指す研究開発プロジェクト「Open Innovation over Network Platform」を、総務省の「ネットワーク仮想化技術の研究開発」の委託研究として実施した成果であり、同技術の確立は世界初だといい、広域環境において検証も行った。

同技術により、複数の通信事業者やサービス・プラットフォーム事業者にまたがるマルチレイヤ・マルチドメインのネットワーク上に、さまざまなアプリケーションの品質要件を満たす広域な仮想ネットワークを要求に応じて構築したり、ユーザの利用状況の変化(アプリケーションの変更、利用者増加など)に対し、動的に資源を用意することで品質劣化を防止する安定したネットワーク環境の提供が可能になるという。

確立した技術の全体像

今回、開発した技術は共通制御フレームワーク技術とマルチレイヤ・マルチドメイン統合制御技術、仮想化対応SDNノード技術の3つ。共通制御フレームワーク技術は、無線・光・パケットなどで構成されるマルチレイヤと運用主体の異なる区分(ドメイン)にまたがるマルチドメインで構成される複雑なネットワーク構成を構造化し、広域な仮想ネットワークの統合的かつ迅速な構築・運用を実現。

また、マルチレイヤ・マルチドメイン統合制御技術は、共通制御フレームワーク技術の仮想ネットワークの制御構造データベースを用い、物理・仮想ネットワークの各資源におけるレイヤごと・ドメインごとの対応関係を格納するリソースプールを構築。これを用いて、レイヤ間・ドメイン間にまたがるネットワーク資源の動的制御を可能とし、広域な仮想ネットワークの効率的利用や安定稼働を可能とする。

さらに、仮想化対応SDNノード技術は、マルチレイヤ・マルチドメイン統合制御により、通信事業者のネットワークの構成や品質を柔軟に変更可能とする通信装置(ノード)を実現。拠点内ネットワークと拠点間ネットワークで構成される通信事業者ネットワークを対象とし「トンネル自動設定処理」と「パケットアウェア光パス処理」の2つの技術で構成される。

トンネル自動設定処理は、拠点内ネットワーク向けおよび拠点間ネットワークと拠点内ネットワークの接続部分向けに、仮想ネットワークを構成するためのトンネルプロトコルをSDNソフトウェアスイッチ上で自動設定する技術。パケットアウェア光パス処理は、拠点間ネットワーク向けに、ネットワークの上位レイヤであるパケットトランスポートのリソース状況に基づいて、下位レイヤでさまざまな帯域を持つ光コアネットワークの光パスを複数提供する技術。

これらの技術により、従来ネットワークごとに必要だったノードを光コアネットワークとパケットトランスポート、IPネットワークとトンネルプロトコルを各1台のノード(マルチレイヤノード)で実現できるため、ノード台数の削減と資源の効率利用を実現し、設備コスト(CAPEX)の削減が可能になるほか、トンネルプロトコルの自動設定や、光パスの集中自動制御を実現し、運用コスト(OPEX)の削減もできるという。

また、上記3つの成果については、1000ノード規模のマルチレイヤ・マルチドメイン環境の広域物理ネットワークを想定し、100の仮想ネットワークを構築・制御することで、サービス提供アプリケーションから広域仮想ネットワークが制御可能であることを、世界で初めて実際の広域実験環境(NTTコミュニケーションズのデータセンター拠点に設置した実験設備を、NICT(情報通信研究機構)の研究開発用テストベッドネットワークJGN-Xで接続した広域ネットワーク実験環境で検証)を構築して検証したという。

各社の分担はNECが共通制御フレームワーク技術、マルチレイヤネットワークのリソース管理技術、NTTが高性能SDNソフトウェアスイッチ技術、トンネル自動設定処理技術、NTTコミュニケーションズが仮想ネットワーク全体のネットワーク品質確認技術、富士通がマルチレイヤネットワークのリソース管理技術(光領域)、パケットアウェア光パス処理技術、日立が多重障害発生時の障害波及予測・復旧技術となる。

今後、各社は今回のプロジェクトで研究開発した広域SDNに関する技術成果の実用化を目指す。また、将来的に発展が予想されているIoTによる多様なサービスを実現する基盤技術としての活用や、第5世代ネットワーク(5G)の実現に向けた要素技術としての活用を検討していく考えだ。