日本電気(NEC)は3月7日、人間の耳穴の形状によって決まる音の反響を用いた新たなバイオメトリクス個人認証技術を開発したと発表した。

同技術は、長岡技術科学大学の協力により開発されたもので、3月9日~11日に神奈川県・桐蔭横浜大学で開催される「日本音響学会2016年春季研究発表会」において発表される予定。

指紋、顔などのバイオメトリクス(生体情報)を用いた個人認証技術は、パスワードや鍵と比べて、漏えいや盗難のリスクが小さく、また忘れたり紛失したりしないという利点がある。同技術では、マイクロホン(マイク)一体型イヤホンを耳に装着し、耳の穴で反響したイヤホンの音をマイクから収集することで、個人特有の耳の形状によって決まる音響特性を1秒程度で瞬時に測定する。

一般に音響信号は外耳道から鼓膜に達し、さらに中耳、内耳へと進むが、実験の結果、特に外耳道を通って鼓膜で反射して返ってくる信号成分と、鼓膜を通過してさらに奥で反射して返ってくる信号成分が重要であることがわかっている。同技術は、これら2種類の信号成分に対応する周波数帯を含む少数の特徴量を抽出することで、少ない計算量での動作を可能にするとともに、外的環境の影響を排除することで、99%以上の高精度な認証を実現しているという。

NECは、重要インフラ施設の保守・管理や警備などでのなりすまし防止や、無線通信・通話における内容の秘密保持、医療現場など移動中や作業中の認証、さらに特定の人向けや特定の場面での音声ガイドサービスなどへの応用を視野に、2018年度中の実用化を目指していくとしている。

音響特性の測定イメージ

個人によって異なる耳穴の音響特性