米Facebookは2月25日(現地時間)、同社サービス上でフルスクリーン広告を可能にするモバイル向け「キャンバス広告」を全世界で正式リリースすると発表した。日本国内では、3月1日より、顧客企業による広告運用がスタートする予定だ。

キャンバス広告は、Facebookのニュースフィード上に表示された広告をタップすると、全画面表示に遷移して、カルーセル広告や動画広告などのパーツを使いつつ、ユーザーに対してリッチな広告表現が可能になる。特に、キャンバス広告内だけで表現できる特殊なパーツとして「Tilt to Pan」が挙げられる。

広告動線は従来とあまり変わらない

Tilt to Panは傾けると傾けた方向に自動的にスクロールする

この機能はユーザーがスマートデバイスを傾けると、画像が傾けた方向に合わせてチルトするというもの。現時点で360度の画像を用意したクリエイティブは存在しないとのことだが、横に長大な画像を傾けて楽しめる広告を用意することで、ユーザーが没入できる体験を、広告プラットフォーム上で用意できる。なお、Facebookは360度動画を同アプリ内で閲覧できるが、この機能でも傾きに反応して360度の映像体験を得られる。

キャンバス広告については、広告枠としては広告単価が大きく変わることはないものの、フルスクリーンで既存のカルーセル広告や動画広告、新パーツの「Tilt to Pan」など、さまざまな要素を組み合わせてクリエイティブを仕上げる必要があるため、制作費がやや高くなる可能性があるとしていた(2016年2月26日時点)。

動画広告やカルーセル広告を同枠で利用できる

効果的にキャンバス広告を打つなら「マーキー」

Facebookでは2014年より、「クリエイティブ ショップ」と呼ばれるFacebook上の広告展開におけるクリエイティブ制作のサポートを日本でも行っている。今回のキャンバス広告のリリースに合わせ、同社クリエイティブストラテジストの田中 徹氏にキャンバス広告の魅力を聞いた。

そもそもクリエイティブショップは、Facebook上で「いかに魅力的にユーザーへアピールできるか」といった広告表現の追求をするために、顧客のサポートを行う部署となる。Facebook傘下にはビジュアルソーシャルのInstagramが存在するが、田中氏はもともとInstagramの担当者であったという。ただ、現在は両サービスが"接近している"こともあり、田中氏の担当領域も双方をカバーすることが多く、今回のキャンバス広告でも3月1日に公開される企業のサポートを行っていた。

田中氏はキャンバス広告について「様々な業界に、幅広く使っていただける」と期待感を込めて語る。米国などでは、昨秋よりテスト配信が始まっており、当初はカタログ形式といった実用的な表現方法が多かったものの、直近では、よりクリエイティブなデザインのキャンバス広告も増えてきているという。

BMWはminiのキャンペーンでキャンバス広告を活用。横向きをベースにして、多彩なコンテンツを組み合わせている

「キャンバス広告では、フルスクリーンとTilt to Panの2つの新機能がありますが、それに加えて既存のカルーセル広告なども利用することができます。そもそも『キャンバス広告』の目的は、クライアントやクリエイティブの方に『自由に(クリエイティブを)描いてください』という意味で"キャンバス"と名付けています」(田中氏)

広告業界ではOOHやテレビなどの大きなフォーマットで自由にクリエイティブを行うが、Web、特にスマートフォン時代においては、バナーなどの広告領域は非常にスペースが狭く、クリエイティブの範囲が限られてしまっていた。そこでFacebookは、その小さな画面の中でも大きな領域で表現できるキャンバス広告を用意し、ユーザーリーチと共に、「キャンバスに自由に書きなぐってもらおう」としたわけだ。

田中氏は自身の経験から、キャンバス広告を1日で最大のリーチ獲得を見込む「マーキー」によって運用すると効果が出るのではないかと予想している。「化粧品など、発売日が特定されている商品を、マーキーでキャンパス広告を打てば、良いんじゃないかなと思っています。米国を含めて、それほど数字が揃っていないので、あくまで私見ですが(笑)」(同氏)

バーバリーの例はクリエイティブとしての完成度が高く、世界のクリエイティブ ショップに"お手本"として共有されたという