リコーとオムロン、SMBCベンチャーキャピタル(SMBCVC)は2月24日、産業革新機構(INCJ)、三井住友銀行(SMBC)からのLP出資(有限責任組合による出資)を受け、テクノロジー系ベンチャーファンド「テックアクセル1号投資事業有限責任組合(テックアクセルファンド)」を3月1日に設立すると発表した。

「テックアクセル1号投資事業有限責任組合(テックアクセルファンド)」

同ファンドは、技術シーズの事業化における高いハードルを越えるためにベンチャー企業と事業会社が連携することで、グローバル市場で競争力のある有望なテクノロジー系ベンチャー企業(テックベンチャー企業)を創出し、日本産業界の発展に寄与することを目的としている。

テックアクセルファンドの運営はリコー、オムロン、SMBCVCの3社で新たに設立した合同会社テックアクセルベンチャーズが担う。リコー、オムロンは単なる「目利き力」に留まらず両社の新規事業開発部門が主体となり、研究/開発部門、生産部門が連携する事業会社の垣根を越えた取組みにより、技術シーズの事業化に向けたオープンイノベーション型支援を実施する。

また、今後も取り組みに賛同する事業会社を出資者として募り、支援の質・幅を拡げることでベンチャー企業の支援強化を図っていく予定。加えて、SMBCの金融ソリューションノウハウやネットワークの活用支援、INCJの産学官のネットワーク活用を通じた活動支援など出資者との連携によりテックベンチャー企業を多面的にサポートする方針だ。

ファンドの規模は50億円、投資対象は産業構造の変革につながるイノベーション領域となり、主としてIoT・ビッグデータ、エレクトロニクス、情報通信などの関連分野でテクロノジーをベースとしたベンチャー企業を想定している。

ファンド設立の背景として、政府の成長戦略の1つに「産業の新陳代謝の促進」が掲げられる中、大企業を呼び込み企業や研究機関の資源を最大限に活用したベンチャーを育成する仕組みが求められている。しかし、日本の大企業がシード・アーリーステージのテックベンチャー企業と連携するには、ベンチャーの保有する技術や自社戦略との事業シナジーを見極めにくく、リスクも高いため具体的な案件に結びついていないのが実態だという。

また、独立系のベンチャーキャピタルではインターネットサービス分野などとは異なり、テックベンチャー企業への投資は目利きが難しく、製品開発までに多様な技術と時間を要するため投資は限定的な側面もあり、日本ではテックベンチャー企業が不足している。

一方、大企業もテックベンチャー企業を支援できるリソース(人材、技術、設備、生産ノウハウ、顧客接点など)は保有しているが、自前主義から脱却できず、本社主導のコーポレートベンチャーキャピタルでは自社との事業シナジーに主眼が置かれるため、魅力的な技術を保有するシード・アーリーステージのテックベンチャー企業との連携が限定的という問題点があったという。

これまで、ベンチャー企業との連携により新規事業創出に取り組んでいたリコーとオムロンは前述の問題意識を踏まえ、テックベンチャー企業に対して個社単体では成し得ない複数の事業会社のリソースをワンストップで提供できる技術事業化プラットフォームの創出を目指し、ベンチャー企業支援を行うSMBCVCとともにテックアクセルファンドを設立するに至った。