銀幕デビューで初主演という大役を務めた映画『劇場版 零 ~ゼロ~』から約1年半。ファッション誌『Seventeen』(集英社)で活躍中のモデルで女優・中条あやみ(19)が、新たな"美少女像"に挑む。『零』以来、ドラマ『She』(15年・フジテレビ系)、映画『セトウツミ』(2016年7月2日公開)など、学園のマドンナや美少女的な役どころのオファーが続く中条。その本音とは?

モデルで女優の中条あやみ 撮影:大塚素久(SYASYA)

今回挑むのは、古屋兎丸氏の漫画を原作に映画化された『ライチ☆光クラブ』(公開中/2月27日より全国拡大公開)のヒロイン。廃工場の秘密基地「光クラブ」を舞台に、9人の少年たちによる裏切りの愛憎劇が描かれ、中条は彼らに"美の象徴"として拉致されるカノンを演じる。"成長と変化"がテーマとなる同作。ポカリスエットのCM出演などで知名度が急上昇した中条には今、どのような"成長と変化"が起こっているのか。1年半前のインタビューを振り返りながら、その実像を探った。

――人気作のヒロインでした。どのような気持ちで臨みましたか。

オーディションに参加させていただくにあたって、マンガを初めて読みました。もともとこういう作品を読むタイプではなかったのですが、読めば読むほど奇抜で独特な世界観は新鮮で、残酷な描写はとても迫力がありました。共感できる部分もあって、絵やキャラクター、描写やストーリーもとてもかっこいいんですよね。その中で、私が演じさせていただいたカノンという女の子は、黒髪ロングでセーラー服。"ザ・美少女"のような役どころはとても魅力的でした。

――冬場の撮影はとにかく大変だったみたいですね。

撮影はちょうど12月のクリスマスあたりの時期で、静岡の廃工場がロケ地でした。隙間風も入ってきますし、ほとんど外で撮っているような状態です。ストーブも用意されてましたが、離れていると温まらないので、空き時間はみんなストーブの周りに集まって(笑)。そこが自然と談笑の場所になっていました。

――そんな過酷な現場で紅一点。心細かったのでは?

そこもみなさん気を使ってくださっていたのか、会話に入れていただいたりして、優しく接していただきました。野村周平さんと岡山天音さんは『黒の女教師』(12年のTBS系連続ドラマ)で少しだけ共演させていただきましたが、みなさんほとんど初対面。そういう空間に飛び込む時、最初は空気をうかがうんですが、みなさんがとても仲が良い雰囲気だったので、話を聞いているだけでも楽しかったです(笑)。

『ライチ☆光クラブ』で"美の象徴"として拉致されるカノン

――中条さんは映画『劇場版 零~ゼロ~』(14年公開)、映画『セトウツミ』(2016年7月2日公開)、フジテレビ系ドラマ『She』(15年)など、美の象徴や学園のマドンナ的な存在を演じることが多いですね。率直にどう思いますか。

学校ではそういうキャラではないので、そういうふうに捉えてくださるのは不思議だなと思っています。なぜでしょうね……学校では休み時間になると、女の子の友だちと購買に行って唐揚げ買ったり(笑)。食いしん坊キャラなんです。今回の作品では、監督からは「すべてを包み込むような存在でいてほしい」と言われていました。それだけの母性が私にあるか分かりませんが(笑)、そういうことを意識しながら演じさせていただきました

――人型ロボット・ライチは、カノンとの対話を通して徐々に人間の心を理解していきます。カノンが流す涙は印象的なシーンでした。

順撮りで撮影が進んでいったので、殺された人はその日にクランクアップ(笑)。みんな東京に帰っちゃうので、現場では徐々に人が少なくなっていくんです。最後のライチと私2人のシーンでは、ずっと一緒にいて愛着も湧いていたから本当に寂しい気持ちになって……。ライチが動かなくなること、そして、この映画の撮影が終わってしまうこと。いろんな意味で自然と涙があふれてきました。殺された人たちは、血まみれのままクランクアップの花束をもらっているんですけどね(笑)。