『ブブキ・ブランキ』キービジュアル

意思を持つ武器「ブブキ」と謎の人型巨大生命体「ブランキ」を中心に展開される重厚なSFファンタジーアニメ『ブブキ・ブランキ』。3DCGを用いた制作を得意とするアニメスタジオ「サンジゲン」の設立10周年を記念したオリジナルTVアニメが話題を呼んでいる。

特筆すべきはフルCGにも関わらずセル画のような感覚で違和感なく鑑賞できる「セルルック」技術の高さだ。

インタビュー前編では、昨今の日本のアニメを見た時に言及される「CGっぽさ」について、その感覚の理由と、『ブブキ・ブランキ』ほか同社が手がけた作品における「3DCGを使ったアニメ制作の利点」などが語られた。

後編では「これからのアニメ業界」について、サンジゲン・松浦裕暁代表に聞いていく。

今後、アニメ業界はCGに置き換わっていく

――先ほどのお話で、CGのメリットはよくわかりました。だからこそ今はCGをアニメに取り入れるのが当たり前になっているのですね。では、今後についても教えてください。現在は一部にCGを使うアニメが多いのですが、そういったハイブリッドなアニメが今後も続くのでしょうか。それとも、サンジゲン作品のようにいつかはフルCGに置き換わっていくのでしょうか。

サンジゲン・松浦裕暁代表

松浦:CGに置き換わる流れは確実に起きると思います。今はサンジゲンをはじめ、数社しかセルルックのCGアニメを作れませんが、他社も参入してくるでしょう。CGアニメが増えるとお客さんも育ってきますし、CGに対する違和感を覚える人も少なくなると思います。

たとえば『サザエさん』とか『ちびまる子ちゃん』とか。ああいった作品こそCGに向いているんですよ。だって年間50本作っていて、しかも同じキャラクターがずっと使われている。モデルを作り、「マスオさんはこういう動きをする」とインプットすれば、手描きで作画するより簡単に作ることができるでしょう。ものすごく安く、少人数で作ることができると思います。

――それは何となくわかる気がします。

松浦:ただ、難しいのはアニメーターが「絵を描きたい(つくりたい)」人でもあることですね。

たとえばガンダムがCGになれば、世の中のアニメのメカはすべてCGになると言われていたんです。だけどガンダムはCGにはなっていない。なぜかというと、サンライズに入ってくるアニメーターはガンダムが描きたいんですよ。だからCGにならない。コストが下がるからCGにすればいいというものでもないんです。

――なるほど。ただ、そういった例を除くと、CGに置き換わる流れはあるわけですよね。それはCGだからこその表現力が優れているからでしょうか。

松浦:それもあるのですが、CGに置き換わる理由は、必ずしもフルCGの方が手描きより優れているからではないんです。

『ブブキ・ブランキ』場面カット

――どういうことですか?

松浦:CGを使う理由の一つは、アニメーターが減ったことなんですよ。今、アニメーターは日本に数千人しかいないんじゃないでしょうか。さらに彼らが育てている次の世代のアニメーターとなると、百人もいないのでは。つまり、単純に描き手がいないからCGが必要とされてきたんだと思います。

――アニメーターはなぜ減っているのですか?

松浦:組織が教育に投資するのが難しいからです。昔は会社組織に属していないとアニメは作れなかったのですが、今は分業が進んで、原画や動画なら自宅でも描くことができます。個人作業ができてしまうので、フリーランスのアニメーターが増えました。

個人で人を育てるのはかなり難しく、教育への投資は組織だからこそできることなんです。そのため、業界に入ってくる人間も少なくなっています。

――なるほど。それを補うのがCGということですね。

松浦:ただ、もう一つの方法があります。それはデジタル作画です。CGよりもしばらくはそちらが主流のやり方になると思いますね。だって、明らかにペンタブレットの方が効率がいいですから。プレビューもやり直しもできますし。

――デジタル作画に抵抗のあるアニメーターもいるのでは。

松浦:いるとは思います。鉛筆の濃さにこだわったりする方もいます。それを否定はしませんが、もうそういう時代ではない。重要なのは日本らしいアニメかどうかです。CGを使っても使わなくても、日本らしいセルルックのアニメに見えるかどうかが大切なんです。