日本はまだ黎明期か

成熟したアメリカ市場と比較すると、国内における有料動画配信サービスはまだ黎明期といえるかもしれない。良く言えば伸びしろが残されている。例えばいまアメリカでTVを購入すると、リモコンにはNetflixへ接続するボタンが当たり前のようについているが、日本ではそこまで「テレビ」と「インターネット」の融合が進んでいない。レンタルビデオと有料動画配信サービスの共栄も、当面は続いていくだろう。

NTTドコモの契約者数7,000万人に対して、dTVの契約者数は約500万。大手通信事業者にとって、有料動画配信サービスは解約率を低下させる手段のひとつにもなり得る

モバイル業界と有料動画配信サービスとの関係に話を絞ると、現在、大手通信キャリアでは家族割や家族とのデータシェアプラン、学割の適用期間の延長、光回線とのセット割、電力とのセット割など、顧客を“より長期に囲い込む”ための様々な施策を打ち出している。有料動画配信サービスが今後、その一翼を担うようになれば通信事業者にとっては旨味が大きい。ただ家族割や学割などは「いかにお得になるか」が最大の焦点であるのに対し、有料動画配信サービスは「見たいコンテンツがあるか」が最重要となる。

話が少し逸れるようだが、NTTドコモではスマホ向け放送サービス「NOTTV」を6月末に終了する。会員数が伸び悩み、かねてから赤字が膨らんでいた。この失敗の理由はいくつか挙げられる。同社の加藤薫社長は1月の決算発表会で「スマホ向け動画配信サービスが想定より早く普及したため」と説明しており、それもひとつの事実だろう。このほか、利用者が見たいと思うコンテンツを提供できなかったことも失敗の一因であるはずだ。

動画を配信するサービスでは、利用者のニーズに沿ったラインナップをいかに多く揃えられるかが成否の鍵を握ることはいうまでもない。逆に、見たいコンテンツさえあれば途中にCMが差し挟まれても利用者は見続けたいと思う。先の記者説明会で岸田氏は、サービス収入、通信収入に加えて将来は広告収入が通信事業者の収入源になると紹介していた。アメリカ市場では一般的となっているモバイル広告だが、国内ではまず有料動画配信サービスの人気を定着させてからになりそうだ。