KDDIとOssiaがCES2016でワイヤレス給電のデモを披露

KDDIが資本提携した米Ossiaが、米ラスベガスで開催された「CES 2016」にブースを出展。独自のワイヤレス給電システムのデモを披露した。

両社は、KDDIが運営するコーポレート・ベンチャー・ファンド「KDDI Open Innovation Fund」を通じ、2015年1月にOssiaと資本提携したところから関係性が始まり、Ossiaが開発したワイヤレス給電技術「Cota」の実用化に向けて、共同開発を進めてきたという。

IoT時代は電池が鍵

米ワシントン州ベルビューを本拠地とするOssiaは、マイクロソフト出身のハテム・ゼインCEOが2008年9月に設立した。KDDIが資本提携に踏み切った経緯について、KDDI 執行役員 バリュー事業本部新規ビジネス推進本部長の雨宮 俊武氏は「きっかけはIoTスタートアップの会社を探し始めたこと。IoTでは、多数のデバイスが場所を選ばず動作するため、電池が鍵になると考えた。そこでOssiaを知り、その可能性に惹かれた」と語る。

米Ossia CEO ハテム・ゼイン氏

KDDI 執行役員 バリュー事業本部新規ビジネス推進本部長 雨宮 俊武氏

Cotaの特徴は、最大10m離れた複数のデバイスに対し無線で給電できる点にある。真っ先に気になるのが、家庭内でワイヤレス給電の電波が飛び交うことによる人体への影響だ。だがOssiaによれば、CotaはWi-FiやBluetoothと同じ2.4GHzの無線を利用しており、EMC検証やFCCの安全基準も満たしているため、安全性にはまったく問題ないという。

CES 2016で公開したデモでは、大型のタワー型PC程度の大きさのチャージャーから、Cota対応のケースを装着した市販のスマートフォンを充電できることを示した。範囲内にある対応デバイスなら何でも給電を受けられるが、給電する対象を「au ID」などで認証したものに限定することも可能になる。

Cotaの給電性能は現時点で最大1W。例えばiPhone用のACアダプタは通常5V/1A(5W)出力であり、最大出力1Wはその5分の1に相当する。ややパワー不足にも感じるが、今後は電波の干渉などバランスを取りながら、出力を上げる可能性を探っていくとしており、ゼイン氏は「スマホなら1時間で20%程度は充電できる。使用時間を延ばすこともできる」と説明している。チャージャーの実際の構造は公開しなかったが、多数のアンテナを放射状に配置することで、家の中でスマホを持ちながら移動しても給電を受け続けられるという。

Cotaによるワイヤレス給電で充電中のスマートフォン

チャージャー内部にはアンテナを多数搭載する

また、スマホ以外にも、IoTデバイスへの給電も視野に入れている。KDDIは、家庭内のIoTデバイスについてどのように電力を供給するかという問題があるという認識を持っており、「Cotaを使えば電源の取れない場所でもIoTを活用できる」(雨宮氏)とその可能性を強調している。OssiaはCotaに対応した単三形の充電池も開発しているため、玄関ドアをアプリで解錠するスマートロックやリモコンの電池としても利用できるようだ。

Cotaのワイヤレス給電に対応した単三形の充電池

リモコン内にこの電池を入れると常に充電状態になる(Ossiaが公開したデモ動画より)

1台のチャージャーで充電できるデバイス数については「目安として、1Wの出力で20本のCota対応単三型充電池に給電できる」(ゼイン氏)という。とはいえ、21本目の電池が突然充電できなくなるわけではなく、単に充電効率が下がるだけとした。