Intel Chipset - 2016年はIntel 200シリーズが登場?

プロセッサ編の所でも説明した通り、Intelは2016年にBroadwell-EP/EXとBroadwell-E、それとKabylakeというラインナップを予定しており、これらはいずれも既存のチップセットがそのまま利用できるという状況である。これはちょうどHaswell Refreshが投入された2014年と同じ状況である。

とりあえずXeon向けはチップセットが変わらない方が望ましいし、Broadwell-E向けのX99も、スペック的に現状見劣りする部分はほとんどないので、特にこれを更新したいというユーザーもそういないだろう。ただ、マザーボードメーカーとしては2016年に新製品がないという事態は避けたい。そこでかつてのIntel 9シリーズと同じような位置付けとなるIntel 200シリーズが用意されることになる模様だ。

そのIntel 200シリーズ、ラインナップとしては恐らく(Z97/H97の時と同じように)Z270/H270のみが用意され、それ以外向けは既存のIntel 100シリーズのままということになりそうだ。一応主にZ270向けの話であろうと思うが、新機能として挙げられているのが

  • DDR4-2400に対応
  • PCIe Gen3を最大24レーンサポート(Z170は最大20レーン)
  • Intel Optane Technologyに対応。これは同社の3D Xpoint MemoryをベースとしたSSDをサポートするものとなる
  • Intel Thunderbolt 3に対応。ただしThunderbolt 3のI/Fが統合されるわけではない
  • Intel RST(Rapid Storage Technology)がPCIe Gen3 x4接続のSSDに対応。つまりIntel SSD 750をRSTでサポートするという話である
  • Overclock動作で設定できる範囲がZ170より広がった
  • 5K/30fps(Single Display出力)もしくは5K/60fps(Dual Display出力)をサポート
  • HEVC 10bitやVP9 10bitのデコーダをサポートした

といったあたりである。見て分かる通り、前世代と大きく違うのはZ270から出るPCIe Gen3のレーン数が最大24になった程度で、あとはもっぱらドライバとかファームウェアの改善や新機能追加が主になっている。

可能性的にはZ97/H97のBroadwell対応と同じように、次のCannonlakeへのアップグレードが可能なのはIntel 200シリーズのみで、既存のIntel 100シリーズはCannonlakeにアップグレードできないなんて可能性もあるが、このあたりはさすがに現時点では見えてこない。

ちなみに本当かどうかは怪しいのだが、CannonlakeではCPUから出るPCI Expressのレーン数が24(Graphics用のx16+DMI 3.0用のx4+追加のx4)になる、なんて噂がちょっとだけある。この追加のx4は何に使うか? というと、3D XpointのSSD用である。

Photo44は"将来のサーバー向けアーキテクチャ"の話だが、実際のところCannonlakeはXeon E3グレードにも利用されるのは間違いないので、CPU側に3D XPointベースのSSD用I/Fを用意しておくというのは、理には適っている。ただこの追加のx4レーンをDesktop/Mobile向けに有効にするかどうかははっきりしていない。

Photo40:出典はIDFにおけるMicronのスポンサーセッションだが、実はIntelもこれと同じ図をあちこちで示している

AMD Chipset - 新FCH投入の予定があるものの詳細は不明

AMD CPU編のところで説明した通り、Zenベースの製品はいずれもSocket AM4でリリースされる。最初の製品はMerlin Falconベースになると書いたが、ここで言う「ベース」というのは、別にMerlin Falconをそのまま持ってくるという意味ではない。

Photo19に戻るが、Merlin FalconはSouth Bridgeの機能まで統合した完全なSoCである。ところがまずリリースされるAPUは、ここからサウスブリッジの機能を抜いたものになる。なので、サウスブリッジ(AMD用語で言うところのFCH:Fusion Controller Hub)が別に必要になる。

しかし、この新FCHについては、いまのところスペックはおろか製品名やコード名まで一切流れてきておらず、中身は藪の中である。ただAMD FXあるいはAPUの機能を考えると

  • CPUとはALink Express III(PCI Express Gen3 x4)で接続
  • PCIe Gen3を最大16レーン程度装備
  • USB 3.0×4~6とUSB 2.0×~10程度を装備
  • SATA 3.0を6ポート以上装備
  • AMD Secure Processor(ARMのTrustZone)を内蔵
  • Sound/Network(GbE MAC)/SPIなどのI/Fを搭載

といったあたりは必須になってくるだろう。ここで1つ見えないのが、Multi GPUの対応である。これはZenベースのAMD FXがCPUから何レーンPCI Expressを出せるかに掛かっているからだ。

例えばCore i7 Extremeに対抗すべく32レーン+ALink Express III用に4レーンが出せるという話であれば、図2の様な構成で最大4枚のPCI Express Gen3スロットをサポートできる。

図2:CPUから32レーンが出せればシンプルな構成で4基のPCI Express Gen3をサポートできる

ところがAPUは恐らく図3のように16レーン+ALink Express III用の4レーンという構成になるので、このプラットフォームにAPUを装着するとSlot #3/#4が死んでしまう。これをカバーするため、FCHから余分にx1レーンを引っ張りだし、もしCPU側がx16レーンが1組しか出ない場合に対処する必要がある。

図3:CPU側から16レーンしか出せない場合、FCHでカバーする必要が出てくる

ちなみに図中の黒い"PCIe Electrical Switch"というのは、例えばMSIのZ170A Gamingに搭載されているこれである。

当然これだけPCIe Switchをばら撒くとなると、その制御はFCHの仕事となるのだが、そのあたりの機能が入るかどうかは構成次第で、現状はなんともいえないところだ。そもそもSocket AM4でどこまでPCIeレーンが出るかもはっきりしていない。

ちなみにこのチップセットは、CPUの所でも説明したとおり3月ごろに立ち上がる予定だ。まずはハイエンド品で、そこから後追いの形で普及帯向けやビジネス向け、バリュー向けなどが登場するものと思われる。このあたりは2016年のCOMPUTEXのタイミングで何かしら期待できそうに思う。

まとめ - PCマーケットに求められる新しい何か

ということで、まめっち(本名:大原・まめちよ・リボンスキー)の愛らしい姿を十分堪能していただけたかと思う(違)。

2015年のまとめを読み返しながら思ったのだが、つくづくこの10~15年位のPC業界は、プロセスの微細化をその原動力として新アーキテクチャや新製品が投入されてきた。

逆に言うと、プロセス微細化が止まってしまうと新アーキテクチャも新製品も出ないという状況に陥るのが改めて実感できた。新しい製品が出ない結果として、プロセス微細化がとまると不況になるというのは大げさにしても、売れ行きが落ちるのは無理もないところだ。

さらに逆説的に言うと、プロセス微細化と関係ないところで新機能や新アーキテクチャが次々に出てきているIoTマーケットに開発者や資金が流れ込むのも理解できる。いまそしてこれからのPCマーケットにもそうした、プロセス微細化と関係ない新しい何かが必要なのかもしれない。