投資を始めてみたいと思いながらも、どの金融商品を選ぶべきなのか、どれくらいの費用をかければいいのかと不安になり、足踏みをしている人も多いだろう。

今回お話を伺った経済評論家の山崎さん

2015年11月に上梓された『難しいことはわかりませんが、お金の増やし方を教えてください!』(山崎元・大橋弘祐著/文響社/1,380円+税)は、タイトルのとおり定期預金しか知らないド素人の「ボク」がお金のプロである「先生」にお金の増やし方を教わるという本だ。

同書で紹介される、初心者が選ぶべき金融商品は「個人向け国債」「上場インデックスファンドTOPIX(国内株式の投資信託)」「ニッセイ外国株式インデックスファンド(外国株式の投資信託)」の3つだけ。金投資も医療保険もFXも何もいらないという極めてシンプルな内容になっている。

本当にその3つだけで良いのか、それ以外の金融商品はなぜ選んではいけないのかを、「先生」こと山崎元さんに伺った。また、本を書くにあたって先生の指導のもと投資を行った「ボク」こと大橋弘祐さんにも感想を聞いてみた。

山崎元(やまざき はじめ)
経済評論家。専門は資産運用。楽天証券経済研究所客員研究員。獨協大学経済学部特任教授。マイベンチマーク代表取締役。1985年、北海道生まれ。東京大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。野村投信、住友信託、メリルリンチ証券などを経て現職。著書に『学校では教えてくれないお金の授業』(PHP研究所)、『全面改訂 超簡単 お金の運用術』(朝日新書)など。

大橋弘祐(おおはし こうすけ)
立教大学理学部卒。大手通信会社の広報、マーケティング職を経て、作家・編集者として活躍中。著書に『SURVIVAL WEDDING』(文響社)など。

やるべき投資は3つのみ!

――書籍で初心者が投資するべきは「個人向け国債」「上場インデックスファンドTOPIX(国内株式の投資信託)」「ニッセイ外国株式インデックスファンド(海外株式の投資信託)」の3つだけだとおっしゃっています。なぜその3つなのでしょうか?

山崎さん:「個人向け国債」は元本保証なので、解約しないかぎり投資したお金は減りません。変動金利型10年満期タイプだと、利回り0.2%ぐらいです。銀行の定期預金が0.1%ぐらいなので、銀行に預けるよりいいでしょう。

一方、投資信託の「インデックスファンド」は株価指数の構成にそって機械的に運用しているもので、人件費が抑えられる分手数料が安いという特徴があります。色々な会社の株を少しずつ買っているので安全ですし、実はプロが運用するアクティブファンドより成績が優れています。

【個人向け国債】
日本政府が発行する債券である「日本国債」を個人向けに買いやすくしたもの。国が責任をもって利子や元本の支払いが行われる。

【上場インデックスファンドTOPIX】
日興アセットマネジメントが運用する、TOPIX(東証株価指数※)に連動したインデックスファンド。TOPIXの数値が上がれば、この投資信託も値上がりする。
※東証一部に上場している銘柄すべての株価を加重平均した数値。「日経平均株価」は東証一部上場企業のうちの代表的な225銘柄の平均株価。

【ニッセイ外国株式インデックスファンド】
米英仏など日本を除く先進23カ国の株式を指標化した数字(MSCI コクサイ インデックス)に連動したインデックスファンド。

(「難しいことはわかりませんが、お金の増やし方を教えてください!」より)

――投資経験者でもその3商品を選ぶべきでしょうか?

山崎さん:まず知っておいて欲しいのは「投資家のタイプや経験によって向いている運用商品が変わる」というのは嘘だということ。なぜかというと、初心者でもベテランでも若者でも高齢者でも、「取ったリスクに対して割の良いリターンがほしい」「コスパ良く投資がしたい」というのは同じだからです。

インデックスタイプの投資信託は手間がかからないですし、平均値をとるものなので、ものすごく損することもありません。そして、インデックスよりも手間や勉強が求められるFX、REIT、金、先物などの投資商品を買ったとして、そのリスクに対するリターンが確実にインデックスを上回るとはいえないわけです。

大橋さん:こういったお話を聞いて、気持ちがすごく楽になりました。色々な金融商品をテレビや雑誌で見ますが、何を言ってるか全然わからなくて。「俺大丈夫かな、損してないかな」とずっと不安に思っていました。お話を聞いて、そういうのがなくなってよかったです。

山崎さん:お金の運用対象を個人向け国債と国内インデックス、海外インデックスの3つに絞って割り切ることが大切です。資産運用はこの本でわかったことにして、あとは自分がやりたいことを思い切ってやってください。お金はお金で合理的に扱って正しい場所に置いておき、残りの人生に全力投球してほしいというのがこの本のメッセージの1つです。