沖縄科学技術大学院大学(OIST)は12月25日、糖尿病治療に新たな道筋を示す海藻マイクロカプセルを開発したと発表した。

同成果は、沖縄科学技術大学院大学とワシントン大学、武漢理工大学の研究グループによるもので、12月25日付けの独科学誌「Advanced Healthcare Materials」に掲載された。

1型糖尿病患者に対する、インスリン摂取量を減らしインスリン投与への依存を断ち切るための効果的な治療として、膵臓にあるランゲルハンス島を移植する手法がある。同手法では、大規模な外科手術を必要とせず、局所麻酔ですむ場合がほとんどで、膵臓ごと移植する場合に比べ、安価で安全な手術を行うことができる。しかし、現在はヒト同士の同種移植しかできないため、移植に必要なランゲルハンス島の数は多くない。また、ランゲルハンス島の保存・輸送の際には超低温凍結法が一般的に用いられるが、細胞を冷却し続けると、細胞内部や細胞と細胞の間にある水が凍結しはじめ、氷晶を形成し、これが細胞膜を貫通して細胞を物理的・機能的に破壊するという問題がある。

今回同研究グループは、微小液滴を生成するマイクロ流体装置を用いて、海藻から抽出した天然高分子「アルギン酸塩」で作られたハイドロゲルカプセルでランゲルハンス島を包み込み、凍結時の危険から保護する手法を開発。同ハイドロゲルカプセルは多孔質の微小構造が特徴で、カプセル内には自由水、凍結結合水、不凍水といった3種類の水が含まれている。とくに不凍水を多く含んだハイドロゲルカプセルでは、細胞を氷晶によるダメージから守り、凍結防止剤の使用を減らすことができる。

マイクロ流体装置の一例

同研究グループはさらに、酸素感受性蛍光色素を同ハイドロゲルカプセルの中に加え、ランゲルハンス島の酸素量をリアルタイムで測定するセンサーを開発。これにより、細胞の生存状態を個別あるいは細胞群として調べることができるようになる。

また、同ハイドロゲルカプセルは、栄養素や膵臓からの分泌物といった小さな分子を容易に通過させる一方で、移植細胞と宿主細胞が直接接触するのを防ぐことができ、さらに患者のランゲルハンス島を破壊したそもそもの原因である自己免疫反応から移植細胞を保護することも可能となっている。

同研究グループは、同ハイドロゲルカプセルが実用化されれば、移植に必要な臓器不足や、細胞の生存状態を個別に確認できる容易で安全な評価方法の欠如といったランゲルハンス島の移植にともなう重要課題を解消することができると説明している。