東京商工リサーチは12月25日、企業データベース約300万社から抽出した玩具卸売301社の業績を分析し、調査結果を発表した。それによると、2015年の国内玩具卸売業の市場規模(2014年8月期~2015年7月期)は前年同期比4.5%増の8,532億6,600万円で、純利益は33.4%減の104億4,300万円と大幅減益になったという。

玩具卸業界301社の業績推移

2014年の同業界は「妖怪ウォッチ」や「アナと雪の女王」の爆発的人気により、国内市場規模が過去10年で最高の売上高を記録した半面、2015年はこれら2大ヒット商品の人気が一巡したため、本来の売れ筋商品の目利き力が問われた1年だったという。

最新期が増収決算は124社(構成比41.2%)、減収は124社(同41.2%)で同数、横ばいは53社で、増収企業は前期の134社から10社減少したが、売上上位の卸業者を中心に売上高を大きく伸ばした。玩具卸業界では売上規模で業績格差が目立つという。

増収の124社の主な扱い品は、模型やフィギュアなどのホビーが21社、小物玩具、花火などの季節商品が16社、ゲーム、カードゲームなどが16社、雑貨15社、ぬいぐるみが12社で、最も増収企業が多かったホビー玩具は、鉄道模型を中心にラジコンカーやアニメ・戦隊物プラモデルなどで、マニア向けや男児玩具の定番商品の強さが目立ち、ブームに左右されやすいゲーム類を上回った。

また、花火や節句人形など、昔から親しまれてきた伝統的玩具も業績をけん引したという。ぬいぐるみは、キャラクターやアニメとのコラボ商品が目立ち、ブーム商品を中心に展開。最近はテレビゲームが注目されてきた玩具業界だが、ブームの一巡で昔から人気の定番玩具が健闘したと同社は分析する。

売 上高伸長率から、玩具卸業界のヒット商品への依存が分かるという。 増収率100%以上は4社(前年同期2社)、10%~100%未満51社(同66社)で、10%以上は合計55社(前年同期68社)に止まった。増収率100%以上の4社は、仮想アイドル・グループのフィギュアや携帯グッズの他、米国製の女児向けメイキング・ホビー、小動物のぬいぐるみのOEM受託、パズルや木製ゲームなどの人気シリーズのリニューアル品などを扱い、大幅な増収となったとのこと。この他、社内的に仕事の効率化と習熟度を高め、前年から新製品の企画数を倍増させ、売上高をほぼ2倍増した卸業者もあったとのことだ。

一方、売上高伸長率が5%~10%未満は35社(前年同期23社)、0%~5%未満が87社(同83社)で、0%~10%未満は122社(構成比40.5%)であり、前年同期の106社(同35.2%)を上回った。また、減収企業は124社(前年同期127社)で、売上高上位と中堅以下の格差が拡大したという。

少子化が進む中で、玩具小売の市場は家電量販店や流通大手7社で全体の6割を占める他、インターネット通販が1割を占め、従来の小売店は市場の2割に止まっているとのこと。特にインターネット通販の台頭で、地方を中心に体力の脆弱な小売店などは倒産や廃業の動きが進んでいるという。

こうした玩具小売店の減少は、玩具2次問屋や3次問屋の経営を直撃するだけに、今後は中小・零細規模の玩具卸業者の淘汰が進む可能性もあると同社は見ている。

流通業界を巻き込んだ大手小売店の玩具市場の寡占化が進む一方、インターネットによる無店舗販売も市場を拡大しているという。これまでの市場環境が大きく変化する中で、いかに消費者ニーズを先取りした商品を開発できるか、卸業界の力量が真剣に問われていると同社は指摘する。同時に、販売チャンネルとして重要な中小小売店との連携も必要であり、今後の玩具卸業界の生き残り策は転換点に差し掛かっていると同社は見る。